日本で「少林寺と言えば?」と聞くと、きっとほとんどの人が「武術!」「超人的な強さの武僧集団!」と答えるだろう。そのイメージはもちろん、映画『少林寺』などから来るものだ。
だが、そんな映画のイメージを、当の少林寺の僧侶はどう思っているのだろう? 「映画は所詮ファンタジー」とか思っているのかな? 少林寺で直接聞いてみたところ……その回答はちょっと意外! 深~い答えが返ってきたのだ!!
・少林寺ブームを巻き起こした映画『少林寺』
1982年に公開された映画『少林寺』。主演は、アクション俳優のジェット・リー(リー・リンチェイ / 李連杰)だ。日本でも少林寺ブームが巻き起こり、「少林寺=スーパー武僧」という印象を確立させたと言っていいだろう。
・少林寺僧に聞いてみた
でも、実際の嵩山(すうざん)少林寺は武術だけではない。以前の記事でも紹介したように、「武」のほかに「禅」と「医」の部門で修行をしているお坊さんもいるのだ。それなのに、武術のイメージだけが先行して、本物の僧侶は微妙な気持ちになったりはしていないだろうか?
先日、河南省の嵩山少林寺に行った際、ガイドさんに「接客中の僧侶なら話しかけてOK」と言われたので、直接聞いてみることにした! ちなみに「僧侶の写真はNG」とのこと。
さっそく、境内でスマホをいじっていた少林寺僧に映画『少林寺』とジェット・リーについてどう思うか質問。すると以下の答えが返ってきたのだ!
「とても感謝しています。文化大革命のときに、少林寺は危うく消えかかりました。しかし、映画『少林寺』、そしてジェット・リーのおかげで、世界に再び少林寺が知られるようになったのです」
ふ……深い! 「映画はエンターテイメントなので、本物とは違う」などクールな反応を予想していたが、まさかこんな回答が返ってくるとは!
・文革では少林寺も弾圧されたと言われている
1966年~1977年に中国で推し進められた「文化大革命」では、伝統は悪とされ、封建的文化は強く批判された。少林寺も例にもれず、多くの仏像や書物が破壊され、難を逃れたものも散逸したそうだ。僧侶も弾圧されたと言われている。
しかし、文革が終わって5年後……公開された映画『少林寺』が大ヒットしたのだ! 外国でも少林寺武術ブームが巻き起こった。確かに、そのような背景を考えると、答えてくれた少林寺僧が「とても感謝している」というのも納得だ。
・いまや鄭州のディズニーランド
あくまで個人的に聞いたものなので、少林寺を代表するコメントではないが、このように考えている少林寺僧がいるのは興味深い。
そんな一度は世に忘れ去られそうになった少林寺も、今や大人気スポットだ。拝観料が100元(約1900円)と、イイお値段なのにも関わらず、週末には観光客がごったがえしている。言わば鄭州のディズニーランド状態である。
もちろん、現在の栄光は少林寺の努力の結果でもあるけれど、映画やジェット・リーが果たした役割も大きかったんだなぁ……。
そういえば、少林寺武術を扱った映画と言えば、チャウ・シンチーの『少林サッカー』もある。こちらをどう思うか、他の僧侶に聞いてみたところ「あれはちょっと……」と微妙な反応だった。
聞けば、その少林寺僧は、ガチのサッカーファン。リアルなサッカーしか認めないらしく、好きなチームはマンチェスターユナイテッドとのことだった。
★こちらもどうぞ!→シリーズ・沢井メグの「突撃少林寺」
Report、絵:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.
▼朝の9時半頃に鄭州からバスに乗り……
▼さらにクルマに乗って、12時30分頃に少林寺に到着
▼手の上の載せてみる的な写真
▼休日の少林寺は本当に人が多い! ディズニーランドかよ!?
▼少林薬局!
▼修行の結果、穴だらけになったという木
▼今日の少林寺人気には、やはり映画『少林寺』&ジェット・リーが果たした役割は大きかったようだ
▼同じく大ヒットした『少林サッカー』については渋い反応だった