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単体では意味をなさない文字。その文字の組み合わせで作られた文章には、人を感動させたり人生観を変えたりするほどの力がある。そしてそんな文章の宝庫である本は、さながら1つの宇宙だと言えるかもしれない。本とは不思議なものである。

現在、「亞書」という本にまつわる不自然すぎる謎がネット上で波紋を呼んでいる。そもそも字面からしてすでに怖いこの本だが、その謎を追っていたら、とんでもない結末を迎えてしまったのでここに残しておこうと思う。

・「亞書」の謎

2015年2月25日に1巻が発売された本書。定価は1冊6万4800円。流通しているのは Amazon のみ、10月26日現在の時点で96巻までが刊行されている。著者には「アレクサンドル・ミャスコフスキー」「亞書刊行會」、出版社には「りすの書房」「ユダ書院」という文字が並ぶが、どれ1つとして聞いたことがない名前である。

・謎の作者

著者名で検索しても本書以外の著作物がヒットしない。つまり作家活動の形跡がないのだ。もちろん、出版社の「ユダ書院」にも公式 HP はない。ただ、本書は国立国会図書館に蔵書されているらしい。

なぜ1カ月12冊という超ハイペースと高値でリリースし続けているのか? っていうか作者誰だよ。どうやったらこんなこと続けられるんだよ。

・ネットの盛り上がり

10月23日~25日の間、本書の謎は某大型掲示板や Twitter で話題になっていた。「楽譜」「聖書の翻訳」「故人の作品を編さんしたもの」など、色んな憶測が飛び交ったがこのリリースを続ける理由に言及したものは、「国立国会図書館の代償金目当て」というものだけだった。

・国立国会図書館の代償金って何?

国立国会図書館に本を納入した場合、代償金をもらえるという制度がある。その制度の概要は下記の通りだ。

納本した出版物の出版及び納入に通常要すべき費用に相当する金額(通常、小売価格の5割+送料)が代償金として交付されます。(国立国会図書館HPより引用)

つまり、本の値段が高ければ代償金も上がるのだ。

・国立国会図書館に問い合わせ

興味を惹かれた私は、国立国会図書館に問い合わせることにした。国会図書館には自写制度があり、蔵書の写真を撮ることができるため、実際に可能かどうか確認してみると……

「写真を撮ることは手続きをしてもらえれば可能だが、著作者の許可がいる」とのこと。ミャスコフスキー氏の連絡先は調べようがないので、連絡がとれるとすれば「りすの書房」か。

・不自然すぎる動き

しかし「りすの書房」に連絡をとろうと、ホームページにアクセスしたところ……とんでもない結末が待っていた! 表示された文言は次の通りだ。

平素は格別のご愛顧を賜わり誠にありがとうございます。誠に勝手ながら、以下の日程で臨時休業致します。2015年10月26日~未定

ホームページが閉鎖していた。茫然とする私。だって昨日は普通に見れたのに。すぐに Amazon を検索してみたが、Amazonの商品ページも全削除されていた。騒がれた直後に全ての情報が消えた。亞書とは一体なんだったのか? このまま都市伝説となってもおかしくないので、キツネにつままれたような気分だ。

なお、最後に「亞」の意味を記したい。亞=つぐ。表面に出ずに下になる。 主たるものの下になり、それにつぐ地位にある。第二位である。 また、悪と通じて、醜悪。擬声語でどもる声を現す。

参照元:Twitter、国立国会図書館りすの書房
執筆:中澤星児

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