本日3月14日はホワイトデー。この日は、男性が女性に対してバレンタインのお返しをする日である。今年のバレンタイン、渋谷駅前でたくさんの人にチョコをもらった私(中澤)。世界の優しさに気づいたあの日のお返しをするのが筋であろう。
というわけで、私は意気揚々と編集部を飛び出した。もちろん目指すは渋谷駅前。今度はあげる側だから、もらうよりもハードルは低いはずだ。人が集まりすぎたらどうしよう? 「最後尾」っていうプラカードも作った方がいいかなあ♪ ……この時はまだ知らなかった。まさか、あんな人が声かけてくるなんて……。
・チョコレート選び
まずは、配るチョコレートの個数だが、今回は多分入れ食い状態になるだろうから、バレンタインにもらったチョコの数より多い15個を用意することにした。そして、サプライズとして高級チョコレートブランド「HUGO & VICTOR」の板チョコ2個(1個2376円)と「GODIVA」1個(1080円)も混ぜておこう。もらった人の驚いた顔が今から楽しみだ!
・大雨の渋谷
渋谷に着くと、思いっきり雨が降っていた。なかなか厳しい状況だが、きっとこの後、人の優しさが私の心を温めてくれるに違いない。バレンタインの時みたいに。ドン・キホーテに直行して黒マジックと金色に光るくじ引きの箱を購入。
中身の見えないくじ引きの箱にチョコを入れることによって、何を引くかわからないドキドキ感を味わってもらおうという訳だ。箱の正面に「ハッピーホワイトデー!! チョコあげます」と書いて準備完了。ゴールドとブラックの組み合わせがラグジュアリーだ。私のホワイトデーが今始まる!!
・雨の中でも大勢の人が行き交う
箱を持って渋谷駅前に立ってみると、こんな雨の中でもたくさんの人が行き交っていた。初めて東京に来た時、周りに興味無さげに足早に歩く人たちでごった返す渋谷の雰囲気が苦手だった。しかし、あのバレンタインを経た今ならわかる。この街は愛で溢れている。
・激しさを増す雨
激しさを増していく雨。靴もすでにビチャビチャ音を立てんばかりに濡れている。スクランブル交差点を行き交う人々の数は相変わらずだが、誰も近づいてこない。
前回も雨が降っているうちはほぼ人が近づいて来ず、チョコをもらえたのは30分が経過した頃だった。やはり、いくら「チョコをあげる」と言えども、雨が降っている中では厳しいのか? とにかく寒い……心も体も。
・40分が経過した頃
40分が経過したが、チョコをもらってくれる人どころか近づいてくる人さえいない。ちょっとこれ、ガチでヘコむんですが……。と、その時、人をかき分けて近づいてくる人影を目の端に感じた。
ひょっとして、待望の1人目ではないのか? でも、こちらが意識しているのがバレると、せっかく興味を持ってくれているのに恥ずかしくて素通りしちゃうかもしれない。ここは我慢だ。絶対見るな……絶対見るなよ。
気配はズンズン近づいてくる。もう間違いない。完全にあの人はチョコをもらいに来ている。そして、ついにその人物が私の前に回り込んで話しかけてきた。ヨッシャァァァアアア! 自分史上最高の笑顔出すで!!
「君、何やってんの?」ガッチリした体格に紺色のジャケットとスラックス、黒光りする革靴……角ばった固そうな帽子。寒さ以外の理由で私の笑顔が凍りつく。
──ポリスメンだった。
ポリスメン「君、何やってんの?」
私「チョコ配ってます」
ポリスメン「チョコ? なんで?」
私「バレンタインのお返しで……ホワイトデーだし……」
ポリスメン「ふーん、チョコか……募金勝手にやってるのかと思った。その箱の字も “チェコ” に見えた」
私「っす。……あっ! チョコいります?」
ポリスメン「俺甘いもの食わないからいらない」
……なんてこった。ポリスメンさえももらってくれなかった。なお、ポリスメン曰く、「今回のことは注意すべきかどうかわからない」とのこと。結局、1時間のうちに話しかけてきたのはそのポリスメン1人だった。
・意外な結果
本当なら、「あげる」より「もらう」方が得しているはずなのに、チョコをもらうよりチョコをあげたい人の方が多いというのは意外な結果に感じる。しかし、考えてみたら、私もよくわからない人にモノをもらうのは抵抗がある。
「何が狙いかわからない」と疑ってしまうからだ。それは、人のスキにつけこむような犯罪が多い世知辛い街で生まれた防衛本能と言っても過言ではないだろう。私から言えることは一つだけ。愛なんて幻想だよね。
Report:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼チョコあげるのに
▼嘘じゃないのに
▼チョコレート15個で8000円くらいかかってるのに
▼誰か……
▼もらってぇぇぇえええ!
▼愛なんて幻想だよ。