中国では現在のところポケモンGOがプレイできない、という件については以前の記事でもお伝えした。それはつまり配信エリアが関係しているワケだが……。島国であればいざ知らず、国境が地続きの大陸においても、プレイできるエリアとできないエリアは厳密に分けられているのだろうか?
中国に隣接する香港ではポケモンGOをプレイすることができる。香港が中国の一部なのか別の国なのか……というのは微妙な問題なのでここでは置いておいて、中国と香港の往来は非常に簡単だ。イミグレ(出入国管理)でパスポートを提示すれば徒歩で国境を越えることが可能。
仮に国境を1ミリ超えた瞬間にポケモンがワッと登場したとすれば、科学の進歩も来るとこまで来たと言っていいだろう。今回私は「中国と香港の国境を、アプリを開いたまま中国側から歩いて越える」試みを敢行するため寝台列車に乗って深センの地へ降り立ったのである。
・深センは中国の電子都市
隣接する深センと香港の国境にイミグレは数カ所ある。私が利用したのは大きな川にかかる橋を歩いて越える『福田口岸』ルート。念のため20分ほど離れた街中からスタートすることにした。
大きな川を越えれば香港である。
この時点でアプリを開いても、ポケモンもポケストップも見当たらない。
イミグレが近づくと同じ方向を目指す中国人(もしくは香港人)が増えてきた。みなラフな格好をし、中には大量の紙オムツや食料品を手にした人の姿も。深センと香港は互いに “日帰りでフラッと買い物に行けちゃうようなとこ” なのだな。
中国側で香港に最も近づけるポイントは駐輪場の奥だったのでギリギリまで行ってみたけど……
何も起きず! ネットに疎い私は「ギリギリだったら風向きとかで配信が混ざったりするのでは」などと期待していたが、そんなユルい問題じゃなかったようだ。ところでここからだと対岸の香港にもポケストップやジムは見当たらない。ほ、本当にポケモンいるんでしょうね……?
・出国GO!
福田口岸の建物内に入り階段を上ると、空港のようにパスポートを提示するカウンターがある。それ以外に面倒な手続き等は不要で、混雑していなかったこの日の所要時間は15分ほどだった。とってもカンタン!
川にかかる長い橋が国境だ。一体どのあたりでポケモンは登場するのだろうか? その決定的瞬間を逃さぬよう、また周囲の状況にも注意しながらゆっくりと歩き出す。
半分を過ぎても何も起きない。外を眺めれば川の流れは穏やかだ。頑張れば泳いで渡れそうな距離だけどソレってアリなんだろうか……そんなことを考えながら歩みを進めていく……
……とかやってるうちにあっさり香港に上陸してしまったぞ! このチャレンジのため中国と香港どちらでも使えるポケットWi-Fiを準備してきたが、本当にうまく機能しているのだろうか? 不安になった次の瞬間!
ジムがパッとわき出たーーー!!
・配信の分かれ目
香港へ入国してすぐの地点にあるジムの名は「そのまんまやないか」とツッコまずにいられない『イミグレーションブリッジ』。そこには傷つきボロボロのラッキーがたった1匹、弁慶のごとく立ったまま絶命していた。
思わず胸が熱くなり助太刀を試みるも、これがなかなかうまくいかない。せめて記念にギフトを入手しようとしたがそれも叶わなかった。明らかに動作が不安定なのである。どう立ち位置を変えても「ジムが遠すぎます」と表示されてしまう。
とはいえここにラッキーを置いた人物が確かに存在しているので、タイミングが合えばこのジムを利用できるということだ。もしかすると香港のネット回線を所有していればすんなりプレイできるのかもしれないし、これから行く人はチャレンジしてみてくれよな!
・そんなバカな……幻の中国ギフト
今回の調査で非常に興味深かったのが “ギフトの位置情報” に関してである。
香港に入国してすぐにゲットしたギフトは、国境付近では位置情報が「なし」の状態だった。
それが香港市内をウロウロするうち、ふと気づけば同じギフトに「香港」の位置情報が表示されている!
そっか、国境付近ではうまく表示されなかったんだね! 次いつ香港へ来れるか分からないし、しばらく記念にとっておこっと!
……それから中国へ戻って数日後のこと。何気なくアイテムボックスを開いた私は次の瞬間、思わず言葉を失った。
位置情報が中国にすり替わってるウゥゥ!!!!
確かに「香港」と表示されていたはずの、というか間違いなく香港で入手したはずのギフトの位置情報欄には、今やキッパリと「中国 広州 深セン」の文字が! これは……何? はっきりしたことは分からないが、位置情報に「深セン」と記載されているなんて……「中国の主張出ちゃってるよ」と感じずにはいられない。
ポケストップのない国・中国。その理由は「位置情報を公開したくないから」だと聞く。しかし中国の位置情報がこうして記載されている。……なぜだろうか? 謎は深まるばかりだが、深く考えるのはやめとこう。
……さて話を戻そう。香港へ入国した私は直結する地下鉄駅付近で第1ポケモンにも遭遇できた。イーブイ、ドンメルにゴクリン……日本と変わらぬおなじみの顔ぶれだ!
・中国四千年のナゾ
市内へ出て数時間プレイしてみた結果、特筆すべき出来事もなく「さ、そろそろ帰るか」という流れになった。
国境から遠ざかるにしたがって通信状態は改善されたものの、私の知るその他諸外国と比較すれば若干ゲームに接続しづらい状況であった。またプレイヤーも少なめだったが、これは場所と時間によるのだろう。ともかく香港ではポケモンGOを問題なくプレイすることができる。
こんなに近い香港と中国だが物価の違いが顕著で、中国に慣れていると香港では水1本買うにもためらう有様である。ポケモン調査を終えた私は食事もとらず中国へトンボ返りを決めこむことに。
数時間前に来た道を引き返すためイミグレから中国方面を向く……すると次の瞬間。私は言葉を失った(本日2度目)。
中国側にポケストップが見えるウゥゥ!!!!
おまけに私が所有していないポケモン『ドラピオン』が中国本土にいると表示されているではないか。バカな! そんなハズないだろう!
でもこうなったら行くしかねぇ!
・あれは蜃気楼……それとも
やはりというべきか……中国へ渡る橋の途中で起きたエラーから復旧してみると、アプリ上のポケストップは全て消失していた。
それでもドラピオンがいるはずの場所へ立ち寄ってみる。当然アプリには何も表示されない。しかし……だからといって、ここにドラピオンが「いない」と誰が言い切れるのだろう? それなら日本で捕まえたポケモンは「いる」と言えるのか? そもそも配信エリアって何だろう? アプリとは? ポケモンGOとは……?
「想像してごらん 国なんて無いんだと」
脳内にジョンレノンが流れたところで今回の調査は終了である。
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.
ScreenShot:ポケモンGO (iOS)
▼ドラピオンはその後無事入手しました