90年代後半、若者達の憧れスポットだった代官山。

オシャレなセレクトショップにカフェ、有名ブランドの路面店などが立ち並び、ファッション雑誌では代官山特集がしょっちゅう組まれていた。

マガジンハウスの雑誌・Olive(オリーブ)の熱心な読者だった私にとっても、代官山はまさに憧れの街……。その代官山がまるで廃墟のようになっているとSNSやwebニュースで話題になっている。代官山はもうオワコンの街だ、みたいな言い草までされている。

あの代官山が、廃墟に……!? 朽ち果てたセレクトショップやカフェを想像し、衝撃を受けた私はオリーブ少女魂を引っさげて、代官山へとすっとんで行ったのだが……。

・金曜の昼下がりの代官山

秋晴れの気持ちのいい天気の金曜。代官山へと私は降り立った。

代官山駅の改札の真ん前には、オシャレ女子御用達のコスメキッチンの店舗があり、相変わらずオーラを放っている。これは代官山の関所であり、洗礼でもある。

各駅しか止まらない小さな駅前にコスメ専門店があるなんて、地方から出てきた人間からすると威嚇されていると同等。ここは代官山、オシャレな街なんだ……と。

そして駅前ではオシャレな女性やお金持ちそうなマダムたちが待ち合わせしている。今のところ、異常なし。いつもの代官山である。

ところが、駅横にあったカフェが閉店してテナントが空いている。

駅の正面にあるビルもひとつもテナントが入っていない。

ただ、ここは銀行のATMすら閉店しており、テナント募集の貼り紙もなかったので建て替えなどで立ち退きの可能性もある。

ははあ、なるほど、たしかにこれは驚きの光景かもしれない。

これはセレクトショップなどが立ち並ぶエリアはとんでもないことになってるのでは……?



・ん?

ということで、昔からブランドの路面店などが並ぶ代官山の顔とも言える旧山手通り、八幡通り方面に向かってみた

きっとここは、とんでもない光景が広がっているものかと思っていたら……


平常運転ではないか。

たしかにところどころ、空いたテナントはあるものの、昔と変わらず代官山の老舗ショップが並んでいるように見える。

A.P.Cの路面店も健在

カヌレで有名なシェ・リュイも健在

てぬぐい屋のかまわぬも健在

なにもかも昔と変わらずあって、人もそこそこいるじゃないか。

私が知ってる代官山と変わらないし、今流行中のブランドの旗艦店も新たにオープンしている。


・蔦屋書店やヒルサイドテラス、代官山アドレスへ…

地価が高いからテナントが撤退しまくってるって聞いたんだけどな。私が思ってる廃墟のイメージとは全然違う。そんなに廃墟感はない……。

とりあえず、代官山の名所のあたりを片っ端からまわってみることにした。

数年前にできた蔦屋書店が入ってる「代官山T-SITE」のあたりがガラガラとか?

いや、めっちゃ栄えてるじゃん。ノートパソコン広げてテラスでスタバ飲んでる人だらけだし、扱ってる雑貨類もオシャレである。

昔からオシャレな店が並んでる「ヒルサイドテラス」のテナントがガラ空きとか?

……いや、昔からほとんど何も変わってないな。松之助NYでは有閑マダムみたいな人たちが普通にお茶しているし、年がら年中クリスマスの雑貨を扱ってる店も健在だった。

少し先に行って、テラスが開放的なカフェ・ミケランジェロは相変わらず平日だというのに大行列。

旧山手通りには相変わらず高そうな犬を連れて散歩している人がいるし、ピカピカの高級車が停まっている。

もっと駅の近くの辺りかな? と思って「代官山アドレス」に行ってみたが……空いてるテナントはあるものの、がら空きではない。

高級なベビーカーの店や、ペットグッズの店があり、リッチなファミリー層の財布……もとい、ハートをがっちり掴んでいるように見える。

変わったことといえば、100円均一のセリアがでかでかと入ってることくらいか。

いまのところ代官山の主要エリアは廃墟という感じではないし、相変わらず「何してるか分からないけどお金持ってそうな人」で溢れている



・代官山駅から渋谷に向かう道が…

なんだよ、これじゃ取材じゃなくてただオシャレにウインドウショッピングしただけの人じゃないか、楽しかったからいいけどさ……と思いながら、代官山駅の方へと戻る。

ふと、代官山駅を出てすぐの急坂を下って渋谷へと向かう道(代官山エスペランサ通りというらしい)を歩いてみると……。


このあたり、テナント全然入ってないな〜〜〜〜〜〜〜〜。


なるほど、廃墟ってここのことだったのか〜〜〜〜〜。


でも……この辺ってすでに10年くらい前から駅チカのわりにそこまで栄えてなかったような気がするから、そこまでの衝撃度はないかもしれない。

そもそも代官山のメインストリートは駅前よりも駅から少し離れた旧山手通り、八幡通り、駒沢通り周辺であって、ここがシャッター街になったからといって「代官山が廃墟化した」というのはちょっとムリがあるような気がするけどなあ。


・今の代官山を歩いた複雑な感想

街を歩いた感想を率直に言うと、廃墟というほど廃れてないけど、最先端の街ではなくなっているという感じだ。

少なくとも私が思い浮かべるキラキラした代官山エリアは、相変わらずハイソな雰囲気を漂わせていた。それなりに人もいたし、商業施設をそなえた大きなマンションが建設中だったので、想像したような「廃墟化」とは少し違う。テナントの撤退は池袋のサンシャイン通りなどのほうが深刻だろう。

ただ、アラフォーの私が「変わってないな」と思ったということは、時が止まっているということでもある。今でも素敵な街であるのはたしかだが、残念ながら流行の最先端の場所でもないというか。今は、昔ほど若い人で賑わっている印象はなく、私と同世代かそれ以上の年代の人たちが多いように感じた。

インバウンドで観光客が多い渋谷や新宿、銀座、浅草に比べたら落ち着いて買い物ができるし、街並みも綺麗である。ただ、昔のようなピリッとしたハイセンスな雰囲気があるかというと……口ごもってしまう。

落ち着いた「大人の街」といえば聞こえはいいかもしれないが、代官山はアラフォー以上の富裕層が昔の憧れを抱えたまま支えている街なのかもしれないと思ったのだった。


執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.
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