あなたは出前の寿司を頼んだことがあるだろうか? 私(あひるねこ)はというと……ある。さすがにあるわ。ナメんなよ。しかし、ふと思ったのだ。よく考えたら、自分のお金で頼んだことはないかもしれないと。
そう、立派なアラフォーだというのに私は、自腹で出前の寿司を食べた経験がただの一度もないのである。どうりで心だけは中学生のままなワケだ。これは今すぐ大人の階段をのぼらなければなるまい。
・出前寿司の思い出
私が最後に出前の寿司を食べたのはいつだったか。たしかあれは20代の時。祖母のお通夜だった気がする。母が地元のお寿司屋さんに頼み、集まった親戚たちに振る舞っていた。ということは私は、10年以上も出前の寿司を食べていないのか。寿司めっちゃ好きなのに。
最近は寿司を食べるといったら回転寿司がほとんどで、あとはスーパーのパック寿司をたまに買う程度。寿司の出前を取るという選択肢自体が、いつの間にか自分の中から消滅していたのかもしれない。
・初自腹
とにかく右も左も分からないので、とりあえずネットで「寿司 出前」と検索してみたところ、一番最初に表示されたのが『銀のさら』だった。そういえば名前は知っているけど頼んだことはないな……。
というワケで、生まれて初めて自腹で注文してみることに。もちろん握り一択だが、『柊(ひいらぎ)』だの『賑(にぎわい)』だの『扇(おうぎ)』だの、似たような商品が多すぎて何を選んだらいいか分からねぇ。間違い探しかよ。
そこで今回は、中間くらいの値段の『相模(さがみ)2人前』とやらを注文してみた。時刻はもう21時をまわろうとしているが、こんな時間に我が家にお寿司様がおいでなさるとは。ソワソワしながら待つことしばし……。さあさあ、ついにやって来たぞ!
念願の出前寿司が!!
……いい。テーブルに置かれた寿司桶は、スーパーのパック寿司とは明らかに異質なグッドバイブスを放ちまくっていた。なんかもう、桶に巻かれたラップフィルムからしていい。それを剥がす行為すら愛おしく感じられるではないか。
・器の重要性
『相模 2人前』は、鮭イクラ・マグロ・真イカ・真鯛・甘エビ・サーモン・ツブ貝・ビンチョウマグロ・煮あなご・ネギトロ・切玉子が2貫ずつ。計20貫入りだ。
ネタのラインナップ自体はスタンダードでも、桶に並んでいると、高級感が8割くらい増しで見えるのはなぜだろう。それくらい桶がいい仕事をしている。もはや桶が本体と言っても過言ではない。にもかかわらず……
『銀のさら』では、なんと寿司桶を使い捨て容器に変更できるようなのだ。出前寿司の醍醐味どっか行くやん……! たしかに洗ったり回収してもらったりする手間は減るかもしれんが、そういうことじゃないんだよ。こっちは寿司だけじゃなく、風情も込みで食っているワケで。
・出前特有の趣
もちろん寿司も超ウマい。出前の寿司のウマさって、ネタの鮮度とかはあまり関係ない気がする。むしろ鮮度だけなら回転寿司の方が上だろう。でも回転寿司の寿司って、寿司というよりは何というか、酢飯に刺身がのった食べ物って感じがしてしまうんだよな。やけに淡々としているというか。
その点、出前の寿司は “お寿司” を食べているという実感がべらぼうに強い。具体的に何がどう違うのかは自分でもよく分からんのだが、例えば真鯛なんて、回転寿司で頼む時とは表情がまるで別人。いや、別魚である。いつも以上に寿司っぽい顔をしていると思わないか。
一緒につまんでいた妻は、甘エビは普通だけどあとは全部おいしいと喜んでいた。めっちゃ正直に言うやん。でも、たしかにどのネタを食べてもウマいし、何より満足感が回転寿司やスーパーとは段違いだ。
こんなに最高なものを10年以上も食べずにいたなんて、私はなんてもったいないことをしていたんだろう。これからはもっと頻繁に……と一瞬思ったものの、冷静に考えたらそれはマジで不可能だという結論に至った。なぜならこの『相模』、20貫でなんと……
税込4082円なのである。
・ド高級
ほ、ほんげェェェェエエエ! 高いィィィィィイイイイ!! 「銀のさら」において『相模』は特に高額というワケではなく、むしろリーズナブルな部類に入るメニューであるが、それにしても1人10貫ずつで4000円とは……ぶっちゃけ全然足りねぇよ。
・身の程を知った
初めて自腹で頼んだ出前の寿司。配達料込みとは言え、それはあまりにも貴族が過ぎる食事だった。たまの贅沢ならいいかなと思ったけど、こんなんめったに食べられないぞ。
もうこうなったら桶だけ買って、そこにスーパーの寿司を詰めるという疑似出前を敢行するしか手はないのかもしれない。出前を取ったと自分を錯覚させる。ああ、小市民……。
参考リンク:銀のさら
執筆:あひるねこ
Photo:RocketNews24.
▼桶を洗って玄関に置いておくまでが出前寿司である。