どのコンビニエンスストアにも必ずある「おにぎり」の棚。
そのなかでも、今くらいの肌寒い時期に にわかに気になってくるのが「温めておいしい」おにぎりの存在だ……が、皆さまはこの種のおにぎりを食す際、きちんと温めているだろうか?
実は筆者、生まれてこのかたコンビニおにぎりを温めて食べたことがない。
だって、そのじつ「温め」でどれくらい差が出るというのか? そのままで十分美味しいのだから、わざわざ時間や手間をかけることもないだろう。
……とはいえ、売る側が「温め」を推奨していることは紛れもない事実。もしも温めることで劇的な変化があるのなら、それを知らずにいるのはあまりにも勿体無い。
知りたい……! 「温め」の向こう側を……!!
・検証開始
というわけで検証してみることにした。
本来なら あらゆるコンビニおにぎりを全種類買い込んで、片っ端から食べ比べてみたいところだが、あいにく筆者はそこまでワンパクな胃袋を持ち合わせていない。
そこで、コンビニ大手3社の「温めておいしい」系おにぎりをリサーチ。するとなんとなく、
①焼きおにぎり
②炒飯、炊き込み風など「ご飯に味付いてる系」
③おこわ、赤飯など「もち米系」
④ポーク玉子、ソーセージ、煮卵など「おかずむすび系」
……の4種類に大別できそうな気がしてきた。
というわけで、3社のなかで最も「温め」系のラインナップが多そうだったセブン・イレブンで、これら4種類を1つずつ購入。これまた胃袋の関係で半分に切って、食べ比べてみることにした。
・焼きおにぎり
手始めに、「こんがり焼いた 香ばし焼おにぎり」。まずはそのままいただく。
……うん、おいしい。しいて言えばちょっと味濃いめ、米の食感しっかりめかなーと思うくらいの、普通の醤油焼きおにぎりである。
さて、温めてみよう。パッケージの表記では500wで20秒とのことだが、今回は半分なので15秒くらい。レンジから取り出した時点で焦げ目の香ばしい香りが立っている。食べてみると……
あ、え、違う!
正直焼きおにぎりでは味に差が出ないと思っていたため、ちょっと驚いた。米が柔らかくなって一体感が増し、さっき感じた味の濃さも温めたあとはちょうど良く思える。
ただ一方で、常温では感じなかったえぐみというか、酸味にも似た醤油味のクセが少し気になった。良くも悪くも味が際立つと言うことだろう。
・ご飯に味ついてる系
セブンの炒飯系おむすびはコラボメニューが出がちな印象だが、今回購入したのは 一番スタンダードであろう「焼きガラ醤油仕立て 炒飯おむすび」。こちらもまずはそのまま。
……うん、炒飯。特に目立った具材もなく素朴な味だが、検証前提で味わうとちょっと米がポソポソしているような気もする。
それではこちらも500w15秒加熱。温めたらごま油の香りとかが漂うかなと思っていたが、ほとんど香りは感じない。
食べてみると……あ、これも違う。
やはり温めることでポソつきは和らぎ、炒飯特有の解れの良さに転じている。油分が米の甘みを引き出す仕事をして、おにぎり全体が一体となっているような気がする。うん、「温め」によってちゃんと美味しくなっている。
ただし、「熱々の炒飯」というワードで期待するほどの香りや味の差は感じられなかった。正直1番変化に期待していたので、ちょっと残念。でも美味しい。どちらかといえば温めたほうがいいだろう。
・もち米系
続いては「きのこの旨味 舞茸おこわ」。そのまま食べると……うん、おいしい!
これ個人的に好きなんだよな。もち米主体なのでちょっと米が硬めで粒感が立っており、舞茸の旨味と相まって、もぐもぐしていると幸せになるおにぎりである。硬めご飯派には是非試してみてほしい。
よし、温めてみよう。実は筆者、このおにぎりは何回もリピートしているが、温めて食べるのは無論初めてである。
わ~~……モッチモッチだぁ……。
味や香りにはほとんど差が出なかったが、食感が圧倒的に変化した。先ほどの米の粒感は完全に なりをひそめ、米同士の結びつきが強くなってひたすらモッチモチしている。「温め前」とは別の食べ物である。
とはいえ、一般的に「おこわ」と言って想像されるのはむしろこのモチモチ感であろう。両者それぞれに美味しいが、それぞれ全く別の道を行っているため、これは好みかもしれない。筆者は……どっちも好きだけど、温めないかも。
・おかずむすび系
最後は「炙り焼きソーセージ」。
おぉー……。実は筆者、これが「炙り焼きソーセージ」初体験である。初めまして、いただきます。
……ガッツリしている。ソーセージとマヨネーズと黒胡椒とご飯だもん、美味しくないわけがない。……が、マヨネーズの油分が少し舌に残る感じはする。このままだと好んで食べはしないかな……という印象。
というわけで、温め。ちなみにこのおにぎりのみ500w30秒表記だったため、半分を20秒加熱。
温めたことでマヨネーズが溶けて溢れるかな……とちょっと危惧していたのだが、思いの外見た目にほとんど変化はない。では、一口。
あ、これはあっためたほうがいいです。
ソーセージの脂肪分が馴染むのか、具材とご飯の一体感が圧倒的に増した。「温め前」では「ソーセージとご飯」を食べている感じで どこかぎこちなかったのが、こちらはちゃんと「おにぎり」している。
あと、温めることでマヨネーズの酸味が飛んでおり、濃厚なソースのような役割を果たしている。
これは……かなり美味しい。今後機会があれば絶対買おう、そして温めよう。
・普通のおにぎりはどうなのか
ここまで来てしまうと「温めておいしい」表記のないノーマルおにぎりを温めてもおいしくなるような気がしてきた。わざわざ普通のおにぎりとの差別化を図る意味はあるのだろうか。
と、いうわけで──。
ド定番、「北海道産真昆布」である。まずはそのままひとくち。
セブンの昆布おにぎり、かなり好きである。昆布が甘めで、海苔の香ばしさと米の味をよく引き出している感じ。
さて、温めてみよう。もちろん時間表記などないので、さっきと同じ500w15秒。いただきまー……
いや昆布あっっっつ。
一口食べるなり、中の昆布が熱すぎて口の中を火傷するかと思った。
温かいご飯に昆布の佃煮と考えれば決して不味くはないはずなのだが、なんだか味のバランスが崩れているような気がする。味が熱さに紛れて、美味しさをしっかり味わえないというか。これは絶対に温めない方がいい。
そういえば、熱々のご飯に昆布の佃煮を乗せて食べるときでも、昆布そのものは冷たいままだよな。やっぱり「温めておいしい」表記の有無にはそれなりの根拠があるんだな……。
・温める意味、あった
いやはや……。正直ここまで予想を裏切ってくるとは思わなかったので、驚きと発見の連続であった。
結論としては、「温めておいしい」おにぎりを温める意味は確実にある。
結局どちらが良いのかは個人の好みに帰されるのかもしれないが、「味が際立つ」「油分が馴染む」「米の柔らかさ・一体感が増す」といった変化は4種に共通していたのではなかろうか。
各人の好みと状況に合わせて使い分けていただけたらと思う。
個人的には「炙り焼きソーセージ」のおいしさを知ることができたのが大収穫であった。これを機に他の「温め」系にも手を出してみたい所存である。
執筆:砂付近
Photo:Rocketnews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]