2024年7月2日、ファミリーマートから「透明プリン?」という名の新商品が発売された。公式サイトによれば、文字通り「透明なのにプリン味が楽しめる新感覚デザート」とのことで、「カラメル風味の透明ソース付き」とも書いてある。

昨今、各所で「透明化」が叫ばれる世の中だが、ついにプリンにもその波は押し寄せてきたらしい。とはいえ、そもそもプリンは何らブラックボックスではないうえに、個人的にプリンと言えば色付きであるだけに食欲もあまりそそられない。

そそられないのだが、どうしようもなく気になる。本当にプリンの味がするなら一大事である。何故なら大変面白いからである。そういうわけで以降よりレビューしていきたい。


もしその正体が「賢い人間にしか見えないプリン」などであったら危うく入手できないところだったが、「透明プリン?」は確かに店頭に並んでいた。さすがのファミリーマートも人類をふるいにかけるようなことはしなかったらしい。ちなみに価格は税込205円だった。

実物を開封してみると、カップに入った透明な物体と、前述のソースの袋がお出ましした。やはりこれをプリンと言われるのは違和感がある。夏も近いので、自由研究用のスライム作成キットと言われた方がしっくりくる。

カップの中身を皿に出すと、事態はいっそう複雑化した。プリンよりも遥かに柔らかなそれは、水っぽいゼリーのように平たく皿の上に広がった。

何だかもう、わけがわからない。グルメ記事としてはかつてないほど写真の撮り甲斐がないし、かつてないほど被写体にピントを合わせづらい。夏も近いので、ゼリーの霊がでかでかと映っている心霊写真を撮っている気分である。



わけがわからないのだが、しかし匂いを嗅げばプリンの芳香が鼻先をくすぐる。付属のソースをかけたなら、さらにカラメルの匂いもそこへ加わる。言いようのない期待と興奮に駆られ、スプーンで透明なデザートをすくい、口に含んだ。

プリンだった。紛うことなき、プリンだった。あの独特の甘みが、カラメルの風味が、限りなく忠実に再現されている。ひたすらに驚きである。どんな魔法を使えばこうなるのかと思うくらい、プリンとしか表しようがない。

ただ、味わいはプリンであっても、食感は先ほど例えたようにゼリーに近い。みずみずしく、喉越しが軽い。つるつると胃に落ちていく。本物のプリンの甘さを備えながら、それでいて本物よりも食べやすいというのはかなりの美点ではないかと感じる。

逆に欠点を書くとするなら、今挙げた特徴がそのまま裏目に出る可能性である。「ゼリー感」と引き換えにコクは影を潜めており、奥深い濃厚さには少々欠ける。プリンらしいまったりとした口当たりや食べ応えを期待していると肩透かしを食らうかもしれない。



ついでに書くなら、食べている本人はこの透明なプリンを視認できるが、何も知らない人に遠くから見られた場合は「無」を食べていると勘違いされること請け合いである。周囲に気を付けながら食べた方がよいかもしれない。

ともあれ何にせよ、「透明プリン?」が期待通りに一大事を引き起こしてくれたことは確かである。「透明にする意味があるのか」という声には、筆者は「こういうプリンが世界に存在していてもいいじゃないか」と答えたい。面白ければ許されることがあってもいいと信じたい。

昨今、各所で「多様性」が叫ばれる世の中であり、プリンにもその波は押し寄せてきたというわけだ。興味の湧いた方はぜひ本商品を手に取ってみて頂きたい。無色透明であろうと、色鮮やかな体験をもたらしてくれるだろう。

参考リンク:ファミリーマート 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.