奥能登豪雨後、石川県の愛護センターは犬や猫の引き取り数が増加 収容数は限界に

いしかわ動物愛護センターで、珠洲市からの猫4匹に面会。10月1日センターに引き取られたばかりで、みんな緊張していた(2024年10月4日撮影)

 私が代表理事を務める「一般社団法人東京都人と動物のきずな福祉協会」では、2024年1月1日の能登半島地震の発災後、環境省動物愛護管理室のお声かけで、石川県と連携協働して被災猫を東京で譲渡する活動を続けている。奥能登では9月下旬に激しい雨が降り続き、地震で脆弱(ぜいじゃく)になっていた地盤に土砂崩れが起きて河川が氾濫(はんらん)。輪島市、珠洲市、能登町では、地震災害に追い打ちをかけるような豪雨災害となった。

(末尾に写真特集があります)

「引き取るに引き取れない」

「緊急のお願いです。猫4匹を引き受けていただけないでしょうか」。石川県が運営する「いしかわ動物愛護センター」の職員(獣医師)からメールが届いたのは、豪雨災害から数日後のことだった。奥能登の家族から猫たちの引き取りを相談されているという。

 家族からの写真4枚が添付されていて、どれほど可愛がられていたのかが見て取れた。サンタの帽子をかぶっている三毛白のミントちゃんが8歳7カ月、キジ白のマリちゃんとみかんちゃんが7歳4カ月、三毛白鼻チョビのまどかちゃんが5歳5カ月。センターでは引き取りが増え、収容可能な頭数に近づきつつある。県内で成猫を譲渡するのは難しく、(殺処分ゼロを実現・維持してきた石川県としては)「引き取るに引き取れない」とのことだった。私たちは4匹を引き受けることを決めた。

奥能登豪雨により珠洲市で被災して住む家を失った家族が県職員(獣医師)に示した愛猫の写真の1枚。

 10月3日、協会の業務執行理事、古川尚美と私は、雨の降る中、奥能登を目指した。「のと里山海道」は、5月9日に走行した時は一車線通行だったが、ほとんどが二車線になっていて、復旧が進みつつあると感じた。しかし、輪島市に近づくと、豪雨災害の爪痕が生々しい状態だった。川沿いの道はドロドロの土砂に覆われ、倒木や流木が流れ込んでいた。輪島市役所のすぐ横を流れる川も氾濫して、水が橋まで到達し、周辺の建物も浸水したという。

輪島市では土砂崩れが発生して塚田川が氾濫(2024年10月3日撮影)

 石川県能登北部保健福祉センターを訪ねた。こちらの建物も、川からあふれ出た水で土台の一部が損壊している。生活環境課の獣医師、杉浦文惠課長に話を聞くと、私たちが県から引き受ける4匹は、珠洲市の家族が完全室内飼育で大事にしていた猫たちだという。家族は地震で被災したが、猫たちと一緒に再建を目指していた。けれども、このたびの豪雨災害で住居を失い、猫たちを手放さざるを得なくなった。言うまでもなく、猫たちとの別れは、涙ながらのつらい決断だった。

能登北部保健福祉センターにて、古川尚美(左)と香取章子(2024年10月3日撮影)

仮設住宅はすべて「ペット可」

 奥能登から金沢へ戻る途中、七尾市にある石川県能登中部保健福祉センターを訪問。職員(獣医師)の餅井眞太郎さんに話を聞いた。地震発災後、県が担当者に説明して、仮設住宅はすべて「ペット可」になっているとのこと。「それまで一緒に暮らしていたペットと仮設住宅に入居できなかったら、日常生活を取り戻したことにならないと思います」。被災者への配慮を聞いて、こちらも温かい気持ちになった。

 確かに、仮設住宅の敷地に、犬・猫のキャリーバッグが置かれているのを私たちも見かけた。仮設住宅が「ペット可」であれば、犬・猫と一緒に生活再建を目指すことができる。

 しかし、奥能登では、豪雨災害によって仮設住宅までもが床上浸水となってしまった。ライフラインは振り出しに戻っているという。心ならずも二重災害に見舞われて、人と動物のきずなが断ち切られていくのは痛ましい。

環境の激変にとまどっている様子の猫たち

 翌10月4日、私たちは津幡町の森林公園内にある「いしかわ動物愛護センター」しっぽの家族を訪ね、珠洲市からのミントちゃん、マリちゃん、みかんちゃん、まどかちゃんと面会。4匹は10月1日に石川県に引き取られ、奥能登から津幡町のセンターに搬送され、駆虫とワクチン接種が行われていた。「ここはどこ?」「なぜママやパパがいないの?」環境の激変にとまどっている様子の猫たちに胸が痛んだ。

まどかちゃんは、ケージ内の棚板を移動して逃げ惑った(2024年10月4日撮影)

 4匹の猫たちを航空機用のキャリーバッグに入れ、センターの職員が運転する「令和6年能登半島地震動物対策本部」と表示された県の車で小松空港へ。羽田到着後、連携する苅谷動物病院グループ・三ツ目通り病院に4匹を搬入した。

ミントちゃん、みかんちゃんなど計4匹の猫を航空機用のキャリーにそれぞれ入れる(2024年10月4日撮影)

 ミントちゃん、マリちゃん、みかんちゃん、まどかちゃんはメディカルチェックを受け、ウイルス検査で猫エイズウイルス(FIV)、猫白血病ウイルス(FeLV)ともに陰性を確認。便検査でも、直接・浮遊ともに複数回行って、陰性が確認された。ちなみに、4匹ともに女の子で、不妊手術が行われていなかった。完全室内飼育だったため、妊娠・出産はなかったようだ。

 4匹は健康状態に大きな問題が見られなかったため、不妊手術を実施。手術も問題なく終わったが、まどかちゃんについては、子宮に水がたまっているのが見つかった。医療にかけなければ、子宮蓄膿(ちくのう)症を発症して、命を落としていた可能性もある。猫の健康と命を守るためにも、不妊手術は必須とあらためて思った。4匹は、抜糸後に退院して、私たちが運営する「東京シェルター・シェアリング神田神保町」に入所する予定だ。

連携する苅谷動物病院グループ・三ツ目通り病院に猫たちを搬入。「ここ、どこ?」獣医さんに抱っこされて、キョロキョロするみかんちゃん(2024年10月4日撮影)

 10月25日から27日、東京ビッグサイト南1ホールで、朝日新聞社sippo編集部が開催する「sippo EXPO」人にも、犬にも、猫にも みんなのGOOD LIFEをめざす展示会が開催され、「保護犬猫譲渡会」も同時開催される能登半島豪雨の被災猫、ミントちゃん、マリちゃん、みかんちゃん、まどかちゃんも27日午前の譲渡会に参加するので、ぜひお申し込みいただければ、と願っている。

【被災猫の救援活動のため、クラウドファンディングに挑戦】
能登半島の震災・豪雨の被災猫の救援活動のため、一般社団法人東京都人と動物のきずな福祉協会では、クラウドファンディングに挑戦しています。「能登半島の被災猫を保護し、医療にかけ、譲渡につなぐ。」ご支援、シェアをどうぞよろしくお願いします。

東京生まれ。出版社勤務を経て、企画・編集・プロデュース会社経営。新聞社・通信社での連載コラム執筆、月刊誌、週刊誌、単行本等の編集・執筆に携る。主著『ペットロス』『猫への詫び状』(いずれも新潮社)、『犬と猫のための災害サバイバル』(学習研究社)等。現在は、一般社団法人東京都人と動物のきずな福祉協会・代表理事と特定非営利活動法人ちよだニャンとなる会・業務執行理事を兼務。

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