■特集:大学受験・進学にまつわるお金
大学受験にかかる費用は、受験校数や、志望する学部・学科、自宅から通える大学かどうかなどによって異なりますが、実際のところ、どれくらいかかるのでしょうか。長男が首都圏の私立一貫校を卒業し、1浪して私立大学の経営学部に合格した高木裕子さん(仮名)のケースを紹介します。(写真=Getty Images)
浪人費用は子どもに一切伝えず
息子は小学校から高校までの一貫校の出身。12年間、伸び伸びとすごしてきたため、受験というシステムに若干乗り遅れ、1年間の浪人生活を送りました。真面目な性格で、勉強は計画を立ててしっかり取り組むタイプです。ただ、その真面目さゆえ、浪人中にかかる費用を知ったら「塾って、そんなに高いの?」と余計なプレッシャーを与えてしまうと思い、予備校代については一切、息子に伝えませんでした(とは言え、予備校のパンフレットは一緒に見ていましたから、見当はついていると思います)。
講習代は夫に内緒で私が負担
受験にかかる費用に関して、私が一番気を使ったのが「夫対策」です。
夫は高校から大学まで海外で暮らした帰国生で、日本の大学や大学受験の仕組みについては、ほとんど知識がありません。息子の受験について相談しようとすると、「なんで学部を今決めないとダメなの?」「共通テストってなんだっけ?」と、毎回質問攻めにされます。基本的には子ども思いの父親なので、息子が高校1年から週2回、大手受験塾で英語と数学の講座を取ったことについては、「大学受験に必要なテクニックを身につけるためには、やむを得ないよ」と説明すると理解してくれましたが、苦手だった古文の個別指導や、長期休暇の期間に行われる朝から晩までの講習に関しては「それ、本当に必要なの?」と腑に落ちない様子でした。
私も初めはひとつひとつ説得していたのですが、次第に面倒になり、通常の講座以外の受講については夫に伝えず、私の収入と貯蓄から費用を捻出することにしました。このときほど、自分も仕事を続けていてよかったと思ったことはありません。
受験にはプリンターが必須 買い替えで予想外の出費
1浪後の入試は、息子が受験したいと思った大学はほぼすべて受けさせたので、予想以上に出願費用がかさみました。たくさんの大学、学部を受験することも、夫はあまりよく思っていなかったため、出願先もすべては伝えず、「無駄だ」と言われそうな出願費用は、こっそり私が負担しました。受験も終盤に近づくにつれて夫対策も完璧になり、我ながらよくやったと思います。
予想外の出費だったのは、プリンターです。息子が受験した大学は、願書の記入まではオンラインで終えられるものの、最後にそれをプリントアウトして郵送しなければならないところが大半でした。故障しては修理を繰り返していた我が家のプリンターでは不安を感じ、思い切って買い替えました。
息子の希望を聞きすぎ反省 限度額は設定しておくべき
幸い、息子は合格できたため、予備校代も無駄ではなかったと私は思っています。あえて反省点を挙げるとすれば「子どもが後悔しないように」という気持ちから、出願先は息子の希望を聞きすぎてしまったことです。第1志望から第3志望の私立大学は、経済学部、経営学部の2学部を共通テスト利用と一般選抜の両方で出願しました。併願校4校については、各校1学部の出願に絞ったものの、やはり共通テスト利用、一般選抜の両方に出願したため、合計費用は50万円ほどになりました。
多めに出願したことで痛んだ財布は、主に私の財布なので仕方ないのですが、家計管理のことを考えれば、子どもの希望を聞く前に、親の立場として、出願する大学の数や限度額をしっかり設定しておくべきだったと感じました。
また、大学に合格することに集中したあまり、入学後の出費についてあまり調べていなかったことも失敗の一つです。大学の授業で使うパソコン、入学式のスーツと革靴、通学定期代、本人の希望で通い始めた税理士予備校など、「いったい、出費はいつ終わるんだ」という出費の無限ループに4、5月は冷や汗をかきました。
一方、覚悟していたのに発生しなかった出費は、車の教習所代です。今時の大学生は昔と違って、「大学に入ったら、まず免許を取る」という考えがあまりないようです。ただ、卒業までには必ず免許を取ることになると思うので、その分は今から貯金しておこうと思います。
受験勉強中、コロナに感染し、後遺症に悩まされるというアクシデントはあったものの、現在の息子は充実した学生生活を送っています。今通っている大学がスーパーグローバル大学に指定されていることがわかっていたため、入学直後から短期留学を目標に、大学のTOEIC対策講座や英会話の授業を積極的に受講しました。最終的に成績優秀者として大学から20万円の給付金があり、先日、1カ月の海外派遣プログラムに参加しました。
大学生になった途端、急に大人っぽくなった息子を見るにつけ、子育てもそろそろ終わりに近づいていることを感じて、ほっとするような寂しいような気持ちです。今になっては、あんなに気を使った大学受験のことがなんだか遠い昔のことのように思えます。
(文=木下昌子)
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