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 一部の先進企業が生成AI(人工知能)の業務活用を目指し、自社の情報システムに実装しようとする動きが見られる中、自らが取り組まなくてもいつの間にか生成AIを業務に活用している――。そんな時代が訪れつつある。海外のITベンダーが提供するSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が、当たり前のように生成AIを利用するようになってきているのだ。生成AIを使ったUI(ユーザーインターフェース)を提供したり、生成AIを活用した業務の自動化支援などの機能をSaaSに組み込んだりと、様々な手段で生成AIの業務利用を推進している。

 CRM(顧客関係管理)を中心としたSaaSを提供する米Salesforce(セールスフォース)の日本法人セールスフォース・ジャパンは2024年10月にも、対話型でSaaSの機能を利用可能にする「Einstein Copilot」の日本語ベータ版を提供する。「2014年からAIの活用に取り組んでおり、生成AIの機能も順次提供していく」とセールスフォース・ジャパン製品統括本部プロダクトマネジメント&マーケティング本部の前野秀彰プロダクトマーケティングシニアマネージャーは強調する。

 SaaS型のERP(統合基幹業務システム)である「S/4HANA Cloud」を提供する独SAPは2024年中に対話型のUIを備えるAIアシスタント「Joule(ジュール)」を使って、「主要な業務プロセスの8割を利用可能にする」(SAPジャパン カスタマーアドバイザリ統括本部SAP Business AI Leadの本名進氏)としている。

 ワークフロー管理を中心にITサービスマネジメントや顧客サービス支援などのSaaSを提供する米ServiceNow(サービスナウ)も、パラメーター設定さえすれば今すぐ業務に利用できるSaaSを、製品に組み込んで提供済みだ。SaaS型ERPを提供する米Oracle(オラクル)や米Workday(ワークデイ)も生成AIを使った機能を既に提供している。

外資系大手SaaSベンダーの生成AIに関する方針
外資系大手SaaSベンダーの生成AIに関する方針
(出所:日経クロステック)
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対話型UIに組み込み型など4つの領域で生成AIを活用

 外資系の大手SaaSベンダーが提供する生成AIの領域は大きく4つある。

 1つは米OpenAI(オープンAI)の「ChatGPT」のような対話型のUIでやりとりするAIアシスタントだ。「A製品の顧客別売り上げデータを表示して」「B製品の販売実績の入力画面を開いて」といったように、実行したい処理を自然文で入力すると、該当するデータを表示したり、機能を呼び出したりする。

 2つめの領域はSaaSの1つの機能として組み込まれた生成AIだ。コールセンター向けの機能で「顧客対応の内容を要約する」、あるいは人事の採用向けの機能で「募集している職種の要項を記載する」といった具合だ。こうした機能はSaaSのバージョンアップに伴い、自動的にユーザーに提供される。

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