ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus、USB)という名前は、ひとつのポートですべてを統一するという野心的な約束を表している。しかし、残念ながら現実はそうなっていない。手持ちのスマートフォンやタブレット端末、ノートPCはどれも「USB-C(USB Type-C)」のポートで、充電やデータの転送をしているかもしれない。しかし、 よく見ると仕様が異なっていることがある。
この記事では「USB4って何?」「では、Thunderboltは?」「USB-Cとは何が違うの?」といった質問に答えていく。デバイスの性能を最大限引き出す参考にしてほしい。
USBに関連する用語
はじめに、知っておきたい定義を説明する。
すべてのUSBデバイスは、USB Implementers Forum(USB-IF)が管理するUSBの規格に基づいてつくられている。主な違いは、データの転送量と電力の供給量の差だ(少なくとも、このふたつが知っておくべき重要な点だ)。
USBデバイスのほとんどは、同じ種類のポートであれば互換性がある。ただし、その性能は「最も速度の遅いもの」に準じることになる。
例えば、「USB 3.2」のSSD(ソリッドステートドライブ)を「USB 3.0」のケーブルを使って、コンピューターの「USB 3.2」対応ポートに接続した場合、データは「USB 3.0」の速度でしか転送されない。端末とケーブルをチェックしてみよう。
デバイスごとの充電器を持ち運ぶ代わりに、複数のデバイスをまとめて充電できるUSB-C Power Delivery(PD)対応の充電アダプターを使っている人もいるかもしれない。PDは最大240ワットの電力供給に対応する急速充電の規格で、デバイスが充電器と通信し、電力の供給量を安全かつ正確に調整する。これに対応するUSBハブもある。俗に「パススルー充電」と呼ばれることもある。
充電アダプターやハブのUSB-Cポートのワット数が、デバイスの必要とするワット数に対応しているかを確認しよう。例えば、MacBook Proの場合、負荷の高い作業中に必要な電力は96ワットだ(とはいえ、ワット数が低くても充電はできる)。従って、最適な充電には100ワットに対応するUSB-Cポートを備えた充電アダプターやUSBハブが必要となる。
USB-CとUSB-Aは、ポートの形がまったく違う。USB-Aは昔ながらの「長方形」だが、USB-Cは「細長い小さな楕円形」だ。上下は関係ないので、差し込む方向を間違えることはない。USBコネクターにはほかにも多くの種類があるが、充電アダプター、ハブ、ドッキングステーションで最もよく見かけるのはこの2種類である。
「SuperSpeed」、「SuperSpeedPlus」、「SuperSpeed USB 5/10/20 Gbps」といったラベル表記も見たことがあるかもしれない。これらはもともと「違いをわかりやすくする」ためのマーケティング用語として考案されたものだが、残念ながらいまでは混乱を招くものになってしまった。基本的にはこれらのラベルは無視して、実際の転送速度を確認したほうがいい。
USBの世代はどうなっている?
さて、「USB 3.2」対応のデバイスを「USB 3.2」対応のケーブルで、「USB 3.2」対応のポートに接続すれば、理想的に動くはず──そう思いがちだが、残念ながら実際にはそうでもない。それは次のような事情があるからだ。
「USB 3.0」が2008年に登場したとき、最大転送速度は約5Gbpsだった。しかし、2013年に最大転送速度10Gbpsの「USB 3.1」が登場すると、5Gbpsの仕様のものは「USB 3.1 Gen 1」に改名され、新しい仕様のものは「USB 3.1 Gen 2」と名付けられた。
わかりづらいって? 話はここで終わらない。
2019年に「USB 3.2」が登場すると、5GbpsのUSBは「USB 3.2 Gen 1」に再度改名され、10 Gbpsの仕様のものは「USB 3.2 Gen 2」となり、新しい20Gbpsの規格は(ご明察!)「USB 3.2 Gen 2x2」となった。
待って。「2x2」って何?
「2x2」は、10Gbpsのデータを同時転送するレーンをふたつ備えたことを指している。
しかし、もはやこうした規格のすべてを覚えておく必要はない。多くのUSBハブやドッキングステーションのメーカーは名前やラベル、シンボルの表記を諦め、代わりにポートの横に最大転送速度を表示するようになったからだ。
古いストレージデバイスやアクセサリを使用していて、転送速度の遅さが気になるなら、それぞれの機器の販売時期を確認してみた方がいい。製造元が世代名や転送速度を明記していない場合、数年前に「USB 3.0」として販売されていたデバイスと、現在「USB 3.2」として販売されているデバイスの転送速度は同じ可能性があるからだ。ちなみに、現在は2022年に制定された「USB4 2.0」に移行しており、データ転送速度は最大80Gbpsだ。
ThunderboltとUSBの違い
Thunderboltは、アップルと協力してつくられたインテルの規格であり、一般的なUSBデバイスと同じUSB-Cコネクターを使用する。しかし、Thunderboltの名で販売するには、次のような追加の要件を満たす必要がある。
- より速い転送速度。Thunderboltのポートは、よくその隣に設けられているUSB-Cのポートと比べると、大量のデータを転送できる。例えば、Thunderbolt 3およびThunderbolt 4の最大転送速度は40Gbps、新規格Thunderbolt 5の最大転送速度は80Gbpsだ(ディスプレイへの出力などの一方向の通信では最大120Gbpsとなる)。
- 高解像度ディスプレイへの出力に対応。Thunderboltのポートは、外部ディスプレイとの接続を容易にするように設計された。ほとんどのThunderboltのポートは少なくとも1台の4Kディスプレイに対応し、最新バージョンであるThunderbolt 4は複数の4Kディスプレイに対応する。Thunderbolt 5ではさらに複数の8Kディスプレイや、超高速なリフレッシュレートをもつ複数の4Kディスプレイに対応するようになる。
- USBとの互換性。Thunderboltは独自の仕様だが、USBポートとの互換性がある。ただし、通信速度は最も遅い部分と同じになる。よいニュースとしては、デバイスがUSB-Cに対応している限り、Thunderboltのポートに接続しても問題なく動作することだ。ただし、速度は少し落ちることがある。
ケーブルの仕様を確認
最大転送速度が非常に高いUSBハブやノートPCのドッキングステーションを手に入れても、ケーブルが対応していないのなら、あまり意味がない。ほとんどのケーブルには対応速度を示す表示がないので、この点を見落としてしまいやすい。どうすればいいのか? 以下の方法を参考にしてほしい。
- デバイスに付属していたケーブルを使う。この方法は確実だ。例えば、外付けSSDに付属してきたUSBケーブルなら、おそらくそのSSDの最高転送速度に対応しているだろう。
- パッケージ表記や仕様詳細を確認する。一部のメーカーは、商品のパッケージやオンラインの説明書、あるいはケーブルが付属するデバイスの説明にUSBケーブルのバージョン(および世代)を記載している。ただし、一部のメーカーは、USBコネクターの種類やバージョン情報(例えば、USB 3.2)のみを記載し、世代(例えば、Gen 2x2)を記載していないことがあり、転送速度を確認することが難しい場合もある。
- USBのバージョンではなく、速度の表記を確認する。USBの仕様はわかりづらいので、多くのメーカーは転送速度を記載するようになった。「おすすめのUSB-C ケーブル(英語記事)」で紹介しているものを含め、多くのケーブルはわかりづらい用語の代わりに、最大転送速度を記載している。電力についても同じだ。Nimbleは、提供しているUSB-Cケーブルの対応電力は最大240ワットと記載している。これは240ワットの充電器と接続し、問題なくその量の電力を供給できるということを意味する。60ワットにしか対応してないケーブルを使用すると、充電アダプターがそれ以上の出力に対応していたとしても、デバイスに供給される電力は60ワットに限られる。
(Originally published on wired.com, translated by Nozomi Okuma, edited by Mamiko Nakano)
※『WIRED』によるUSBの関連記事はこちら。
雑誌『WIRED』日本版 VOL.53
「Spatial × Computing」
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