いしわたり淳治のWORD HUNT
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悩みごと、考えごと、迷っていること 生活の中で機能する『考え中』

音楽バラエティー番組『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で披露するロジカルな歌詞解説が話題の作詞家いしわたり淳治。この連載ではいしわたりが、歌詞、本、テレビ番組、映画、広告コピーなどから気になるフレーズを毎月ピックアップし、論評していく。今月は次の6本。

 1 考え中”(YONA YONA WEEKENDERS『考え中』/作詞:磯野くん)
 2 “まず俺がキレる人間って占えてなかった”(ハマカーン 神田伸一郎)
 3 “粒立てる”
 4 “スマホ何回か落とすとか”(ロンドンブーツ1号2号 田村淳)
 5 “野外焼肉宴会”(BBQ王 内山芳一)
 6 “結婚してなかったら「使え使え」、結婚したら「使うな」”(ザブングル加藤)

日々の雑感をつづった末尾のコラムも楽しんでほしい。

悩みごと、考えごと、迷っていること 生活の中で機能する『考え中』

悩みごと、考えごと、迷っていること。そういうものが一切ない人は、いるのだろうか。人生の岐路に立つような大きな問題から、目の前のサラダのドレッシングを玉ねぎ黒酢にするか胡麻(ごま)にするかくらいの小さな問題まで、私たちは日々あれこれ考えている。人は1日に35000回もの選択をしているという研究結果があるとも聞いたことがある。

YONA YONA WEEKENDERSの新曲『考え中』。ラジオで「右か左か考え中 AかBか考え中」というサビを聞いた時から、その言葉が頭を離れない。そして、自分が目の前の何かを選ぶ時、何気(げ)なく口ずさんでいる。

思えば、クイズ番組などでいわゆるシンキングタイムに掛かるインストの曲みたいなものはあるにせよ、「考え中」という言葉をここまでダイレクトに歌詞の核に据えた歌は、今までなかったのかもしれない。この歌もまた、ありそうでなかった、生活の中で機能する歌詞の一つだと思う。

悩みごと、考えごと、迷っていること 生活の中で機能する『考え中』

7月29日放送のテレビ朝日『しくじり先生 俺みたいになるな!!』でのこと。地上波バラエティー出演が減ったハマカーンの二人が講師を務めた。ツッコミの神田さんは、自分がバラエティーに向いていないと終始ネガティブな発言をこぼしながら、自身の過去のしくじりエピソードとして“占いガチギレ事件”を振り返った。THE MANZAIで優勝後、あるイベントで毒舌占い師の魚ちゃんが神田さんに「あなたは全く才能ない」「優勝なんて1回なら誰でもできる」と占い結果を辛辣(しんらつ)に告げたところ、「人の悪口で飯食ってんじゃねえよ」とただただ怖い顔と声でキレたのだという。神田さん曰(いわ)く、「(自分は)基本的に占い師を認めていない」そうで、「まず、俺がキレる人間だって占えてなかったんですよ。まともな占い師なら、『こいつに言ったらキレる』って分かるから、言わないじゃん」と言った。

確かに、私も占いとはなんぞやということは時々考える。占い師が本当に未来を占ったり、言い当てたりするというのなら、ただ気をつけるべきことだけ教えてくれればいいのに、なぜ「あなたの性格はこう見えて実はこうだ」だの、「あなたの家の玄関に〇〇を置いているでしょう?」だの、頼んでもないことを言うのだろうといつも不思議に思う。自分が特別な能力を持っていると相手に信じ込ませたいがゆえの心理戦、マウンティングのように感じて、なんだか妙に冷めてしまう。

本当に相手の性格が分かったりするなら、そんな風に驚かすために能力を使わないで、相手の性格ならどう言えば伝わるか、言い方を考えればいいだけなのではと思うのだけど、その辺どうなんでしょう。まあ、そうやって驚かせるのが一番手っ取り早く信じてもらう方法なのかもしれないけれど。

悩みごと、考えごと、迷っていること 生活の中で機能する『考え中』

最近、よく「粒立てる」という言葉を耳にする。使い方としては、誰かが失言めいたことを言ってしまった時などに使われる。例えば、「でも、どの部署にもそういう面倒臭い先輩っているじゃないですか」「え? 例えば誰のこと?(笑)」「あ……、いや、ちょっと。そこを粒立てるのやめてもらっていいですか?」みたいな感じである。

掘り下げる、フォーカスする、ピックアップする、強調する、注目する、フィーチャーする、言葉尻を捉える……。それと似たような表現は他にも何かあるような気がするけれど、どれもしっくり来なくて、じゃあ、何がベストかと考えると、やっぱり「粒立てる」がしっくり来る感じがする。

“その言葉”が生まれるまで、その感情や状況のことを誰もが他の言い方をしていたはずなのに、“その言葉”が生まれた瞬間、一瞬で取って代わる。「スベる」とか「サムい」みたいなものもそうだと思う。「粒立てる」を初めて耳にした時、これはそういう言葉の一つのような気がした。
言葉が生まれてから、こんなにも時が経つのに、2022年の今もまだ感情や状況を正確に言い当てる言葉の正解は出揃(そろ)っていないのだなと思い知る。つくづく言葉って面白いものである。

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