AGフレンズ　松本千登世さん
大人美容を、楽しく〈２〉
子どもの習慣に「きれい」の答えがある！

私が女性誌の編集部で美容担当になったのは、ちょうど30歳になったばかりのころ。当時はまだ、「大人は美の舞台から降りるもの」といった前時代的な意識があったのも事実。ところが、美容の進化が先か、大人の意識が先なのか……。いつの間にか、年齢にあらがい、いつまでも若々しくあるための「アンチエイジング」が常識になり、年齢によって美しさを諦める必要はない時代になりました。

そして、今。次第に「アンチエイジング」から「ウェルエイジング」へと私たちの意識がシフト。それはきっと、「まわりに見られる美しさ」から「自分が感じる美しさ」へのシフトと同義で、もっと言えば、美しさはすなわち、健やかさであるという意識への変換だと思います。

心のどこかで、ずっと感じていました。職業柄、化粧品の「力」は誰より知っているし、信じてもいる。でも、でも……、化粧品同様、いやそれ以上に大切なのは、心身ともに健やかであるための「習慣」。実際、私の肌や髪が大きく変わったのは、それを見直したからでした。

習慣を見直すきっかけは、意外にも「入浴」。ある入浴のスペシャリストに取材をした際、入浴がいかに睡眠の質に影響を及ぼしているかを知ったことでした。それまで、30分でも多く睡眠時間を確保するために、ささっとシャワーで済ませていたのを、睡眠時間を30分削ってでもバスタブにじっくりつかる時間に当てるように。さらに、睡眠の質を上げるために、就寝時間の1時間半から2時間前に入浴時間を設定し、習慣化したのです。

すると……？　次第に、「早く寝なくちゃ」から「早く寝たい」になり、眠りも目覚めも、スムーズに。たったこれだけで、こんなにも変わるなんて！　それまで、あまり意識をしていなかったけれど、私の眠りの質は、さほどよくなかったことに、逆に気づかされたほどでした。

入浴のスペシャリストに、こうも言われました。「入浴は『休息』でなく、休息の先の『休養』であるべきです」。入浴を、今日の疲れを取る休息に終わらせず、明日の英気を養う休養にできたら？　もっと、心が前向きになれる、豊かでいられる。入浴を睡眠の質を高めるためのものとして捉え直してみた結果、その気づきが起点になって、習慣が変わり始めたのです。

睡眠の質を高めるという視点で、食事を捉え直し、できるだけ寝る3、4時間前に終わらせるよう早めの時間に設定しました。同じ視点で運動を捉え直し、できるだけタクシーを徒歩に、エスカレーターを階段にと意識を変えて、自ら体をほどよく疲れさせるようにしました。睡眠そのものも捉え直して、寝具や照明、香りなど改めてその環境を整えました。知らず知らずのうちに、肌に安定感が宿っていて、多少の疲れやストレス、睡眠不足なら、はね返せる、年相応の健康な肌を取り戻していたのです。

早寝、早起きを心がけましょう。食事は好き嫌いをなくしましょう。よくかんで食べましょう。外で遊んで、体を動かしましょう……。思えば、それは、小学生のころ、黒板の脇に書かれていたような、極めてシンプルでベーシックな「生活習慣」。大人に必要なのは、そして健康的な肌に必要なのは、実はちょっとした習慣の見直しなのかもしれません。

体が健やかだと、栄養をしっかり摂取できるように、健やかな肌は、化粧品の力も存分に享受できます。化粧品の効果を倍にするも半分にするも、習慣次第。化粧品に頼る前に、習慣の見直しを試みたいと思うのです。思いのほか、ドラマティックでスピーディーな変化が訪れるはずだから。

文＝松本千登世さん
写真＝品田裕美撮影

ＡGフレンズ（2023年度）の記事バックナンバーです。
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＞＞高尾美穂先生〈３〉　自分なりに準備して更年期を心地よく
＞＞高尾美穂先生〈４〉　自分の人生は自分で変える　まず行動を
＞＞松本千登世さん　大人美容を、楽しく〈１〉　「きれいになりたい」は何のため？
＞＞松本千登世さん　大人美容を、楽しく〈２〉　子どもの習慣に「きれい」の答えがある！
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