Presented by 地方競馬全国協会
SPONSORED

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために

SPONSORED
子牛にミルクを与える藤井牧場の若手社員たち

北海道富良野市の藤井牧場では、牛がくつろぐための砂のベッドや、牛の排泄(はいせつ)物を処理するための浄化湿地の導入など、牛にも、環境にも優しい牧場運営に取り組んでいます。牧場を歩くと、環境保全と資源循環を実現し、持続可能な酪農を後世に引き継ぐためのさまざまな工夫が見られます。藤井牧場が目指す「SDGs」について紹介します。

砂のベッドを導入 牛の快適さアップ 

1月上旬、藤井牧場の牛舎を訪れると、牛が大きな体を砂の上に横たえて気持ちよさそうに寝ていました。砂で作った牛のベッド「砂床(すなどこ)」です。牛舎ではゴムマットやわら、おがくずなどで整えた牛のベッドを用いることが多いのですが、藤井牧場では2012年に砂床を導入しました。砂床は、牛にとって足が滑りにくくて寝起きがしやすく、体を休める際の快適性が格段に増すそうです。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
砂床でくつろぐ牛。穏やかな表情で休んでいた

藤井牧場では1974年から、牛が牛舎の中を自由に動き回れる「フリーストール方式」を採用しています。牛舎の中で牛を1カ所につなぎとめずに、牛床だけは1頭ごとにスペースを分けて用意する方法です。牛はそれぞれ気に入った牛床を選ぶことができますが、「エサに近い場所が牛に人気です。強い牛がだいたいその場所を取ります」と、5代目社長の藤井雄一郎氏(45)が教えてくれました。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
砂床で横になる牛=藤井牧場提供

ふん尿を分離 肥料として活用

一つの牛床で約1.4トンの砂が必要で、成牛約700頭分で1千トン近い砂が使われているそうです。牛は1日に1頭あたり約8キロの砂を汚すなどして「消費」するため、砂床を採用したのと同時に導入したのが「サンドセパレーター」という機械です。砂床として使われた後の牛のふん尿が混じった砂から、ふん尿を分離する機械で、分離された砂は砂床に再利用しています。分離したふん尿のうち、ふんは堆肥(たいひ)にし、尿は液肥として、所有するデントコーン(飼料用トウモロコシ)など飼料作物の畑などに散布しています。機械はアメリカ製で、購入価格は高額だったそうですが、藤井牧場はデントコーン畑や牧草地など計約660ヘクタールも所有しており、牛や環境に優しいだけでなく、牛の排泄物を肥料として有効活用する資源循環の確立のための大事な投資と言えるでしょう。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
サンドセパレーターを通過してふん尿が取り除かれた砂が積み上がっていた

家畜のふん尿と農業は深い縁があります。家畜のふん尿には、植物の成長に必要な窒素やリン酸、カリ(カリウム)などが含まれ、昔から肥料として活用されてきました。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
重機でふんをかき回し、発酵させて堆肥にする=藤井牧場提供

ただ、多量に散布し過ぎると土壌の成分バランスが崩れたり、河川に流出して水質汚染などにつながったりする恐れがあります。悪臭の原因にもなり、ふん尿中の窒素成分は温室効果ガスでもあります。そのため、酪農や畜産では、規模の拡大にともない、増加する家畜のふん尿の処理が課題になってきました。国内有数の1500頭の牛を飼育する藤井牧場も同じ悩みを抱えていたといい、「肥料として畑に利用できるふん尿の量と、実際に牛から出される量とのバランスに苦心してきた」(雄一郎氏)と言います。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
デントコーン(飼料用トウモロコシ)の収穫作業=藤井牧場提供

そこで、2018年7月に牛舎の近くに作ったのが、肥料として利用できなかったふん尿と雑排水を混ぜたものを、排水できる水質にまで処理する「ふん尿処理浄化湿地」と呼ばれる人工的な湿地です。液状になったふん尿と搾乳施設やサンドセパレーターを洗った後の洗浄水を混ぜて尿の成分を薄めたものをこの湿地に流し込み、湿地に生える植物の根や土壌、微生物の働きで放流できる水質にまで「浄化」するシステムです。

牧場に湿地 自然の力で「浄化」

ふん尿と洗浄水が混ざった汚水は、最初に空気を送り込んだばっ気(水を空気にさらす)槽の中で微生物の働きで分解し、次に沈殿槽で浮遊物を沈殿させて取り除きます。こうして汚水と汚物を分離させます。

その上で、さらに浄化湿地を利用します。湿地にはヨシを植えたり、ミミズを放ったりすることで小さな生態系を作り、そこに湿地全体に行き渡るよう汚水を送り込みます。浄化湿地の中では、植物の根の活動によって取り込まれた空気が、汚水に含まれる有機物やアンモニアなどを分解・除去する微生物の活動を促進してくれます。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
ふん尿処理浄化湿地=藤井牧場提供

また、ミミズなどの小動物が汚泥を食べて、消化排泄(はいせつ)することで微生物が働きやすい状態にしてくれます。藤井牧場にはこの浄化湿地が五つあり、ふん尿が混ざった汚水は順番に五つの湿地を通過して、時間をかけて排水できる水質にまで「浄化」されます。自然の生態系の営みを利用した半永久的なシステムで、雄一郎氏は「維持費用が少なくて済むのが最大のメリット」と話します。浄化湿地を利用し、最後は排水することで、ふん尿を肥料として畑にまく人手や機材の燃料費なども抑えることができ、牧場の経営改善にも寄与しているそうです。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
浄化湿地に敷き詰められた小石や砂が汚水を濾過(ろか)してくれる=藤井牧場提供

藤井牧場は砂床を導入した2012年、畜産農場の衛生管理基準である「農場HACCP(ハサップ)」の認証を取得。乳用牛部門では国内第1号でした。家畜伝染病の予防とまん延防止の手法がベースで、伝染病のリスク管理や牧場の運営マニュアルの確立につなげました。砂床を導入したことで、牛の蹄(ひづめ)の病気も激減。生乳の品質に影響する乳房炎の発生率も下がったそうです。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
蹄を削って整える削蹄(さくてい)作業=藤井牧場提供

牛が砂床で横たわりながらゆっくりエサを食べるため、エサが十分に消化・吸収され、1頭あたりの乳量も増加。分娩(ぶんべん)後の親牛の代謝異常もほとんど見られなくなり、飼育する牛の自然増にもつながったといいます。2017年には農産物の安全を示す日本版の認証規格「JGAP」(乳牛・生乳部門)も取得するなど、牧場の環境改善や生乳の品質向上に努めてきました。そして、今後さらに牛の数が増えても、環境にも、牛にも優しく、持続可能な牧場であるためにと導入したのが、自然の生態系の働きを利用した浄化湿地でした。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
牛の寝心地を考え、砂床を整える=藤井牧場提供

藤井牧場では、4代目で現会長の裕一氏(76)と、現社長の雄一郎氏の代に持続可能な酪農の実現に向けた取り組みが大きく進みました。サンドセパレーターの購入など多額の出費も必要で、リスクもあったと思います。それでも、藤井牧場が大きな投資や新たな設備の導入を続けてきた背景には、2013年度から2年間、農林水産省の「食料・農業・農村政策審議会」の審議委員として、地方の農村の現状やあり方について議論した雄一郎氏の特別な思いもあったようです。

豊かな農村を次代に 牧場の挑戦は続く

藤井牧場のある富良野市は、かつて人気を博したテレビドラマ「北の国から」の舞台として知られ、牧場の近くにはドラマのロケ地にもなった「麓郷(ろくごう)の森」もあります。富良野市には今も国内外からたくさんの観光客が訪れますが、麓郷地区など市中心部以外の地域は「高齢化が激しく、人もどんどん減っている。このままではなくなってしまうのでは」と雄一郎氏は危惧しています。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
藤井雄一郎氏(左)と裕一氏

そんな雄一郎氏が思い描いているのが「富良野未来開拓村構想」です。「私の夢みたいなものなんですけど」と雄一郎氏。それでも、「うちのような大きな農場だからこそ実証実験の場にもなれるはず」と構想について語ってくれました。

構想では、藤井牧場と乳製品メーカーなどの企業や自治体、大学などの研究機関が連携し、商品開発や環境に配慮した設備の開発や導入、人材育成などに取り組み、研究開発に必要なラボも建設する。牧場スタッフも含め、そこに集う人たちが家庭を持ち、豊かな農村生活を送れるよう生活環境も整備する。酪農と地域のためにさまざまな人たちが協力して新たな事業と地域社会の構築を目指す「開拓村」を富良野に作るイメージです。そして、開拓村で学んだ若者たちが各地で酪農を盛り上げ、持続可能な農村地域の復興につなげる。そんな思いが込められた「富良野未来開拓村構想」も「SDGs」の一つと言えるのかもしれません。

SDGsの視点、牧場にも 後世に酪農を引き継ぐために
集合写真を撮る藤井牧場の若手社員と裕一氏(前列左)。笑顔が絶えない

初代・喜一郎氏が開拓者として淡路島から北海道に渡り、富良野で農家として独立して今年で120年。戦後の農地の減少や牛の伝染病など、たび重なる困難を乗り越えて藤井牧場は歩んできました。今では20代の社員が半数以上を占めるなど、牧場には次代の酪農を担う若者が集まっています。今春には、道内外から大学や専門学校を卒業した若者5人が加わります。酪農と地域の未来のために、新たな仲間を加えて藤井牧場の挑戦はこれからも続きます。

地方競馬全国協会は、地方競馬主催者からの交付金を原資に、各種の畜産振興事業に対して補助を行っています。国や地方公共団体の畜産振興に関する方針に即して、畜産振興施策を円滑化し、補完または先駆的役割を果たすことを目的としています。
地方競馬GO畜産プロジェクトはこちら

文・写真:&編集部 井上潜

REACTION

LIKE
BOOKMARK

リアクションしてマイルをもらう

SHARE

  • LINEでシェア

FOR YOU あなたにおすすめの記事

POPULAR 人気記事

※アクセスは過去7日間、LIKE、コメントは過去30日間で集計しています。

RECOMMEND おすすめの記事

&MEMBER限定の機能です

&MEMBERにご登録(無料)いただくと、気に入った記事に共感を示したり、コメントを書いたり、ブックマークしたりできます。こうしたアクションをする度にポイント「&MILE」がたまり、限定イベントやプレゼントの当選確率が上がります。

&MEMBERログイン

ID(メールアドレス)
パスワード

パスワードを忘れた方はこちら

&MEMBER登録はこちら

&MILEの加算アクション

  • &MEMBER新規登録:100マイル
  • 記事に「LIKE」を押す:10マイル
  • コメントの投稿:30マイル
  • 自分のコメントに「LIKE」がつく:10マイル
  • *今後、以下のアクションも追加していきます

  • 朝日新聞デジタル有料会員の継続:100マイル
  • ログインしてサイト訪問:10マイル
  • アンケート回答:30マイル
  • 「朝日新聞SHOP」での購入:50マイル
  • イベント申し込み:50マイル

&MILEの獲得数に応じてステージがあがり、ステージがあがるごとに
&MEMBER限定のイベントやプレゼントの当選確率が上がります。詳細はこちら

  翻译: