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ファンを増やし続ける「VWゴルフGTI」 初代から新型まで歴代モデルずらり

VWクラシックが保存している初代GTIはいまの車と比べても遜色ない走り 写真:Wolfgang Grube

50年の歴史とカルトカーになった理由

カルトカーなるクルマがあるとしたら、1台はまちがいなくフォルクスワーゲン・ゴルフGTIだろう。初代は1976年にドイツで発売され、現在は第8世代。その間、ファンを増やし続けてきた。

私にとっても例外ではない。GTIにはさまざまな機会を通じて接してきた。いいクルマだなあ、というのが常に思うこと。

1976年に発売されたとき日本の自動車専門誌でも話題になった初代GTIは正規輸入されていなかったので、乗れたのは後年になってだが、続く2代目から現在の8代目までは、発売されるとすぐ乗り、都度「楽しい、よく出来ている、すごい」と感心させられた。

メーカーのフォルクスワーゲン(VW)は、GTIがカルトカーになった理由として「コンパクトなゴルフと基本的に同じ車体でありながら、アウトバーンではポルシェと競り合う性能をもち、学生が乗っても金持ちが乗ってもおかしくないクラスレスの存在」であることを挙げている。

2024年夏に、私は二度にわたってゴルフGTIに接する機会があった。ひとつは6月にドイツ・オスナブリュック(ブレーメンとドルトムントの中間)での「ゴルフの50周年」記念イベント。GTIのベースになったゴルフの登場は1974年なのだ。

ファンを増やし続ける「VWゴルフGTI」 初代から新型まで歴代モデルずらり
オスナブリュックの「(スポーツ)ゴルフの50周年」で展示された歴代GTI 写真:Wolfgang Grube

オスナブリュックは、ゴルフやビートルのカブリオレを手がけていたカルマンという会社が工場に使っていた場所で、同社が倒産したあと、フォルクスワーゲン(VW)が買収して、自社製品の組み立てを行っている。ゴルフにゆかりのある場所だ。

私が訪れたイベントは、歴代のスポーツゴルフの歴史を見せるというもの。GTIをはじめ、4輪駆動のR、それにモータースポーツ関連の歴史的車両がずらりと並べられた。レースを中心としたドライビングゲーム「グランツーリスモ」のためにデザインされたコンセプトモデルまで含まれていた。

そのときは、フォルクスワーゲン・クラシックという歴史的なモデルを動態保存する部門が、初代GTIと、日本でいま若いひとを中心に人気が高い2代目GTI(1984年発表)を一般公道でドライブするチャンスまで与えてくれた。

どちらも、いまのドイツの路上で、最新型の車両と伍(ご)して走れるだけの性能をもっていたのに、あらためて感心。ハンドルだけはパワーアシストがないので重いけれど、操舵(そうだ)するタイミングさえおぼえれば、カーブを曲がるときは軽快な身のこなしで、軽量ボディだから加速もよく、剛性感が高く、室内の作りの質感も十分。いまも乗るひとが多い理由がよく理解できた。

自慢の2500台が集結した「ファンフェスト」

もうひとつ、ゴルフGTIがらみの出来事は、7月最後の週末に、やはりドイツのフォルクスワーゲン本社があるウォルフスブルグ(ハノーファーから70kmぐらい)で開催された「GTIファンフェスト」、GTIオーナーのミーティングだ。そのときは観にいっただけですが。

ファンを増やし続ける「VWゴルフGTI」 初代から新型まで歴代モデルずらり
会場に使われたのは本社に隣接するフォルクスワーゲン・アレーナ(アリーナ) 写真:Volkswagen

公式発表では、700台の歴代モデルが参加登録とある。ただしやってきたクルマはなんと2500台。これもメーカーの発表だ。イベントとしては大成功だろう。会場周辺の道路は、ファンなら垂涎(すいぜん)の歴史的VW車で埋めつくされた。

GTIトレッフェン(ドイツ語でミーティングの意)と呼ばれたイベントが、オーストリアのリゾートにおいて、ファンの手で始められたのは1982年。いらい拡大の一途をたどった。しかし、参加者が増えるにつれ、周辺住民から苦情が出るようになった。

そこでVWでは、本社が管理する敷地内で同様のイベントを開くことを決定。それが今回のGTIファンフェストなのだ。

ファンを増やし続ける「VWゴルフGTI」 初代から新型まで歴代モデルずらり
ピックアップやキャンパーなど改造モデルも多くて楽しい 写真:Volkswagen

会場でインタビューすると、ドイツのみならず、フランス、イタリア、スペイン、英国、スウェーデン、さらにベラルーシなどから自走で参加するなど、参加者にも気合が入っていた。「ベルターゼー(もとの開催地)も懐かしいけれど、ここでも同好の仲間と情報交換が出来て楽しいです」と、話してくれたひとが何人もいた。

会場では、最新のGTIやRがお披露目されたり、コンセプトカーが並べられたりと、ファンの手作りイベントとは少々おもむきが変わっていたのも事実。2025年に発表を予定しているというコンパクトなピュアEV「ID.GTI」も、それなりに注目を集めていた。

ファンを増やし続ける「VWゴルフGTI」 初代から新型まで歴代モデルずらり
限定で販売されるGTIクラブスポーツを紹介するヘッドオブデザインのアンドレアス・ミント氏 写真:Volkswagen

「基本的にはファンのためのイベントという本来の性格を大事にしています。ただ、メーカー主催となったことで、VWのこれからについても理解していただくいい機会だと考えています」

VW本社の取締役会のメンバーであり乗用車部門のセールス・マーケティングそれにアフターセールスを担当するマルティン・ザンダース氏は、会場で私にそう語った。

ゴルフGTIを最初、生産すると決めたとき、”たいして売れない”と当時の経営陣は考えていたそうだ。ところがフタを開けてみたら大ヒット。当初、5000台の限定生産にとどめておくのが賢明、と考えていたが、1977年だけでも、西ドイツ単一市場で2万2000台のGTIが売れた。グローバルでは約46万2000台に達している。

そのあとも、このクルマの本質的な価値とはなにか、をつねに考えてモデルチェンジを繰り返してきたため、日本を含めて世界中に熱心なファンを生むことになった。それがゴルフGTIだ。このイベントは、VWがやってきたことが正しいと教えてくれた。

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