篠原ともえ アイデアのありか
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視線を誘う朦朧としたマチエール。身体中で感じるニューヨーク旅

このコラムではこれまでにアイデアの源泉を求め海外への旅もご紹介してきましたが、今回は創作心を刺激する体験を求め、ニューヨークへ行ってきました。

20代になってから美術館巡りや語学を学びに度々足を運ぶこの街は、何度行っても、新たな発見をくれる大好きな場所。アイデアの源泉と出会うには、忙しい中でもしっかりと時間を取り、旅へ行くのも大事なアクションなのではと感じています。今回は私が巡ったお気に入りのエリアや出会ったアートをいくつかご紹介しましょう。

視線を誘う朦朧としたマチエール。身体中で感じるニューヨーク旅

デザイン会社を共に立ち上げた、夫である池澤樹も初めての個展はここニューヨークでした。二人旅では彼に教えてもらい、街を巡る範囲も広がりました。中でもお気に入りは、ギャラリーが多く集まる最新アートの発信地「Chelsea(チェルシー)」エリア。新進気鋭のアーティストの作品と出会えるアート街として、日々トレンドがここから発信されています。1日かけて作品を眺め心に刺激を存分にチャージできるそんな場所なのです。

視線を誘う朦朧としたマチエール。身体中で感じるニューヨーク旅

好奇心をくすぐる記憶と体験を胸にとどめておくために、本屋巡りも必ずしています。おすすめは「Printed Matter, Inc.(プリンテッド・マター・インク)」。ここにはアーティスト自身の持ち込みによる、自費出版の作品があり、本のみならず版画作品など、プリントにまつわるオリジナリティー溢(あふ)れる作品が勢ぞろいしています。

お土産にぴったりなトートバッグやTシャツ、缶バッジやペンといったグッズもたくさんあり……ついつい珍しいアイテムに手が伸び買いすぎてしまうほど。夢中になれる空間です。

視線を誘う朦朧としたマチエール。身体中で感じるニューヨーク旅

ショッピングやお土産も満喫しながら、創作にまつわる材料調達もかかせません。巨大なボタンに縫い針が刺されたパブリックアートが目印である、マンハッタンの中心に位置する「Garment District(ガーメント・ディストリクト)」。ここは生地・ボタン・ビーズ等のファッション関係の卸売問屋さんが集結しているエリアです。普段なかなか出会えない貴重なマテリアルとパーツを集め、その資材は時々私の衣装へも登場しています。

生地選びは、毎回自分自身の眼を養うような気持ちでセレクトし、素材や織り、デザインなど、海外ならではのクオリティーの高さに感嘆することも少なくないほど。東京でいうと日暮里のような問屋街なので、ものづくりが好きな方は機会があればぜひ足を運んでみてほしいです。

視線を誘う朦朧としたマチエール。身体中で感じるニューヨーク旅
Tomoe Shinohara’s personal photograph. Artworks ©Yoko Matsumoto. Courtesy the artist and White Cube.

そして今回のニューヨーク旅の目的の一つでもあったのが、ある作品に会いに行くこと……! マディソンアベニューに佇(たたず)む「White Cube New York(ホワイト・キューブ・ニューヨーク)」にて、かねてファンであった、画家・松本陽子さんの展覧会が開催されたのです。

彼女の作品との出会いは、4年ほど前。初めてその画を見たとき、視線を誘う朦朧(もうろう)としたマチエールと色彩の世界に私はすっかり魅了され、その後、ロンドン、そして、ニューヨークと海外でもその魅力が広く受け止められたことを知り、この街で彼女の作品を絶対見たい!と楽しみにしていました。

展示作品は90年代に描かれたものも多く、実は松本さんはかつて私の通っていたデザイン高校の近くにアトリエを構えており、同じお店で画材を買っていたなんて偶然も! そんな不思議なご縁のある作品たちと、時と場所を越え、こうしてニューヨークで出会えたことに、言葉が出ないほど感動し、たくさんの刺激をもらいました。「あぁ来てよかった……」。自分の眼で・心で感じ作品と気持ちを通わせる特別な瞬間でした。

視線を誘う朦朧としたマチエール。身体中で感じるニューヨーク旅

アート鑑賞だけでなく、時間が許す限り町中を巡り、建築も大いに堪能し、トーマス・ヘザウィックが率いる「Heatherwick Studio(ヘザウィック・スタジオ)」が設計した「Little Island(リトル・アイランド)」にも。ハドソン川の水上に浮かぶこの公園は「水に浮かぶ葉」をイメージしており、有機的なその独自のフォルムに目を奪われた私は、心に描き留めるようにじっくりと、建築ウォッチングも楽しみました。

ニューヨークは多様な感性が響き合い、いつ来ても刺激的でいろんなアイデアを与えてくれる場所です。常に創作のアンテナを張っている私にとって、こうして日常から少し離れ、時間を忘れ贅沢(ぜいたく)に、世界中のデザインやアートを身体中で感じることが必要なのだと、あらためて教えてもらった旅でした。

皆さんの好きな街はどこですか? 夏の厳しい暑さも少しずつ穏やかになってきた今日この頃。行楽の秋、芸術の秋、味覚の秋。心を豊かにするために、いろんな感覚に耳を傾け、ジャンルレスな旅のプランを計画してみてはいかがでしょうか。

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