「守ってくれているもの」を知っておけば AGフレンズ 村田貴子さん〈2〉
Aging Gracefully(AG)プロジェクトが「AGフレンズ」の1人としてお迎えした、ファイナンシャルプランナーの村田貴子さん。AG世代(40代と50代)の女性たちが生きるために役立つお金の話を、専門家が伝えるコラムの2回目です。
日々、生活をしていると、お金の心配はつきません。AG世代で子育てをしていると教育費などの負担も大きいですし、健康に不安が出始めるタイミングでもあります。「働けなくなったらどうしよう」「住宅ローンの支払いは?」など、考えたらきりがありません。
ただ、「守ってくれているもの」を知っておくことで、何かあったときに必要以上に心配することは避けられます。
今回は、AG世代に知っておいてほしい社会保障制度、「高額療養費制度」と「傷病手当金」についてお伝えします。病気やけがで入院したときや働けなくなったとき、力になってくれる制度です。ぜひ、参考にしてください。
病気やけがで入院したときに
高額療養費制度は、国民健康保険、会社などを通じて加入する健康保険組合、後期高齢者医療制度、共済組合などに加入している方が対象です。医療機関や薬局の窓口で支払った医療費(入院時の食費負担や差額ベッド代などは含みません)が、1カ月(月の初めから終わりまで)の限度額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。限度額は、年齢や所得によって異なります。
例えば、50歳で年収500万円の人の場合、1カ月に100万円の総医療費(保険適用される診察費用の総額)がかかったとします。窓口での自己負担は30万円ですが、計算式にあてはめると、自己負担限度額は次のようになります。
「80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円」
総医療費が200万円かかったとしても、自己負担限度額は97,430円。思っていたよりも、自分で負担するお金が少ないと感じられた方も多いのではないでしょうか。
さらに負担を軽減する仕組みとして、世帯合算(※1)や多数回該当(※2)などもあります。
※1「世帯合算」 一人1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数回の受診や、同じ世帯にいる人(同じ医療保険に加入している人に限られます)が受診した場合、同じ月に窓口でそれぞれ支払った自己負担額を合算できます。ただし、69歳以下の受診については、21,000円以上の自己負担のみ合算されます。
※2「多数回該当」 過去12カ月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」に該当となり、自己負担限度額が下がります。
このような制度を知っておくと、民間の医療保険などを選ばれる際にも、本当に必要な備えだけを選択しやすくなりますね。
また、医療費が高額になるときは、「マイナ保険証」が便利です。マイナ保険証は、健康保険の情報を、マイナンバーカードにひも付けて健康保険証として利用するものです。
高額療養費制度の適用を受けることにより、病院の窓口で支払う自己負担を限度額に収めるには、事前に「限度額適用認定証」の発行手続きを行う必要があります。
急に入院したり手術を受けたり、思わぬ事故に遭うなどして、事前に限度額適用認定証を入手できなかった場合は、後日、健康保険組合などに申請して、限度額を超えた医療費を還付してもらう手続きが必要です。この点についても、マイナ保険証を持っていればオンラインで資格の確認ができるので、その場で高額療養費制度の適用が受けられ、家計からの持ち出しを減らすこともできます。
働けなくなったときに
傷病手当金は、被用者保険(国や地方公共団体、法人などに雇われる従業員やその扶養家族が加入する健康保険)の被保険者が、病気やけがで休業中、被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。病気やけがのために会社を休み、事業主からじゅうぶんな報酬が受けられない場合に支給されます。
一日の支給額は、「支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額(※3)を平均した額÷30日×2/3」に相当する額です。
例えば、月40万円の給与(額面)をもらっている人が1カ月休業した場合、1カ月分の支給額は約27万円です。支給要件に合えば、通算1年6カ月まで支給してくれます。もちろん何かあった場合の貯蓄も必要ですが、いざとなったときはこの制度があると思うと、心強いですね。
※3「標準報酬月額」 社会保険料の計算をしやすくするために、被保険者(従業員)が得た給与などのひと月分の報酬を、一定の範囲ごとに区分したものをいいます。支給要件などの詳細は下記の図③を参照してください。
今回は二つの社会保障制度を紹介しました。どちらも、何かあったときに前向きに生きていけるような、支えになる制度です。「守ってくれているもの」を知っておくことで、賢く豊かに人生を送っていくことができるのではないでしょうか。
これからも世の中の情報にアンテナを張りながら上手に活用して、40代、50代を輝かせていきたいですね。
>>次回は2025年2月下旬に公開予定です。
村田 貴子(むらた たかこ)さん
証券会社勤務、銀行勤務を経て、現在は「ほけんの窓口グループ株式会社」の教育部担当部長。
多くのお客さまの心配事や悩みを解決するファイナンシャルプランナーとして勤務後、3千人以上の社員教育に携わる。その他、銀行・保険会社向け研修も担当。最近は、高校生向けの金融授業、小学生向けのキッズマネーセミナーも実施。「資産形成」についてのセミナーも力を入れており、ライフプランを踏まえて資産形成を考えることの重要性を伝えている。
文=村田貴子さん
写真=品田裕美撮影
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