会社が大きくなっても変わらない思い「一杯のコーヒーで人を幸せに」 猿田彦珈琲(東京・恵比寿)
この秋バリスタ全国V・準Vを独占 「同じ味わい」徹底
原宿駅の新駅舎に120席の大型店を出したり、今年7月には大阪に初進出を遂げたりと、なにかと話題の多い「猿田彦珈琲」だが、筆者はもっぱらこぢんまりした恵比寿本店がお気に入りだ。カウンターや外のスペースを含めても12席ほど。アットホームな雰囲気で落ち着けて、仕事の合間のコーヒーブレークにはもってこいだ。開業当初からスペシャルティコーヒー専門店を標榜(ひょうぼう)しているだけあって、コーヒーの質の高さは言わずもがなだが、クオリティーをとことん追求する攻めのコーヒー店というよりは、肩の力を抜いてのんびりできる店だ。
先日訪れた際には、店先に今年10月に開催された「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ 2024(JBC2024)」で、伊藤大貴さんと安部潤さんが優勝、準優勝したというポスターが誇らしげに貼られていた。SCAJが主催する八つの競技会のうち、バリスタのチャンピオンを決定する大会での快挙だ。
こうした大会に積極的に参加することで、スタッフみんなのモチベーションが高まり、「おいしいコーヒーを淹(い)れたいという気持ちが会社全体に自然と浸透していきます」と広報の伊折ぽぽさん。
今回に限らず、大会で実績を残した社員が店舗を回り、レシピを紹介したり、指導に当たったり、社内で技術を共有するのだそうだ。
社員が400名を超えて大所帯になってきた今も、社長の大塚朝之さんをはじめみんな仲がよく、社員同士の交流も密な、ファミリー感強めの会社だとも。会社がどういう方向に向かおうとしているのかも、全員に共有するようにしているそうだ。確かに猿田彦珈琲を訪れるたびに思うのが、店の雰囲気の良さとスタッフの接客の素晴らしさだ。一定の基準はあるものの、接客の仕方は店ごとの判断に任せているとのことだが、どの店に行っても、生き生きと働いていて気持ちがいい。
扱う豆は店舗ごとに多少変わるが、恵比寿の場合は、定番の「東京ティルインフィニティ」、深煎りの「猿田彦フレンチ」、シーズナルブレンドなど5、6種類のブレンドに、浅煎りのシングルオリジンが2、3種類。最近のはやりの浅煎りにはこだわらず、深煎り文化が根付いている日本でより多くの人に楽しんでもらうため、浅煎りから中深煎り、深煎りまで幅広くラインアップしている。
筆者は、その日お勧めのシングルオリジンを飲むことが多いが、今回は看板ブレンドの「猿田彦フレンチ」を試してみた。深煎り固有の苦味は感じられるも、すっきりとクリーンな味わいで飲みやすい。温度が低くなるにしたがってほのかな甘みが感じられた。店の一番人気というカフェラテも試してみたが、何度も試行錯誤を重ねたというこだわりレシピには、しっかりとコーヒーの存在感が感じられるように中浅煎りを使用。風味豊かでコクがあり、確かに飲みごたえのあるラテだった。
扱う豆のほぼ全てがダイレクトトレードで、エチオピアやイエメン、パナマ、ブラジルなど多彩な豆を扱う。全店舗の焙煎(ばいせん)を担うロースタリーを併設する調布店では、焙煎担当に創業者の大塚朝之さんも加わって、毎週必ずクオリティーやフレーバーのチェックを行う。抽出についても恵比寿のトレーニングセンターで頻繁に研修を行い、どの店でも同じ味わいで出すことを徹底しているのだそうだ。
「規模は大きくなってきましたが、一杯のコーヒーで人を幸せにするという思いは、今も大切に受け継がれています」と伊折さん。その思いを実現するために、自分たちのコーヒーのスタイルを守りつつ、少しずつ店舗数を増やしている。
個性を追求するマニアックなカフェが増えて、1杯2000円近くする希少性の高い豆を目玉にする店も目立つが、「自分たちは、誰にでも気軽に利用してほしい、日常的においしいコーヒーを飲んでほしいと考えています」。
今後、JBCに優勝した、伊藤さんや安部さんのレシピを飲める機会を模索中とのこと。ぜひチャンピオンのレシピを味わってみたいものだ。
猿田彦珈琲(さるたひこコーヒー) 恵比寿本店
東京都渋谷区恵比寿1-6-6 斎藤ビル1F
03-5422-6970
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