現代的な和の空間に馴染むデンマーク家具 小山薫堂さんを魅了した「ヒュッゲ」のコンセプト
放送作家・脚本家であり、ラジオパーソナリティや京都芸術大学の副学長なども務める小山薫堂さんは、東京と京都を拠点に活躍の場を広げ続けています。多忙を極めるなかで、京都の自宅で過ごす時間は「日常のせわしさに追われるのではなく、暮らしの余白を楽しみたい」といい、インテリアには特にこだわりがあります。そんな小山さんがこの度、室内の雰囲気に合わせて選んだのが、デンマーク生まれのインテリア・ブランド「BoConcept(ボーコンセプト)」。新調した家具に囲まれた暮らしは、小山さんにどのような変化をもたらしたのでしょうか。
飽きずに好きでいられる家具は「作為がなく自然、用の美もある」
窓から京都の四季折々を楽しめるリビング。柔らかなベージュの土壁が基調の和モダンな内装に、モスグリーンのシングルソファを主役にした家具がゆったりと並びます。
「京都にいると、時間の流れがゆっくり感じられるのです。それは、歴史のある町ならではの、時間のものさしが長いからという気がしていて。東京では1時間、1分単位に物事が凝縮されていますが、京都では自分のペースで集中できる。そんなふうに心が解放された状態で考えごとをする方が、いいアイデアが生まれる気がします」
そう話す小山さん。京都のこの部屋は、情報やタスクに追われる日々をいったんリセットし、一人で思索にふけるのにぴったりの空間だと言います。元々、リビングで仕事をすることも多く、ワークスペースとくつろぐ空間とをはっきりと切り分けないのが、小山さんのスタイル。この部屋にソファが置かれたことで「書斎ほど書斎らしくなく、リビングほどのんびりするわけでもない、中間のような空間ができた」と語ります。
考えごとをしたり休憩したりする時はソファでリラックスして、オンライン会議やデスクワークの時はテーブルに向かう。その時々の気分で心地よい居場所を選択する、自由度の高いインテリアが完成しました。
小山さんが真っ先に選んだのが、「by nendo」シリーズのシングルソファ。デザインオフィス「nendo」代表で、国内外で高い評価を得るデザイナーの佐藤オオキさんのデザインです。「オオキくんとは旧知の仲なのですが、彼のプロダクトをまだ持っていなかったので、BoConceptとコラボレーションした家具があると知って一番に選びました。本質的で、余計な装飾がなく、凛としている印象がやはり、nendoらしい。折り紙という日本の文化をコンセプトにしているのにも惹(ひ)かれました。座り心地はもちろん、手触りや匂いも僕好みで、とても気に入っています」
小山さんがこよなく愛する現代的な和の内装と、デンマーク生まれの「BoConcept」の家具との親和性の高さも心地よさにつながっています。以前から北欧の家具が好きで、和と北欧の相性の良さを実感していたという小山さん。「居心地のよい空間・時間」を意味するデンマークのライフスタイル「ヒュッゲ」と、日本の文化はどこか共通点があると話します。
「どちらも、作為がなく自然と馴染む。素材を大切にしている。長く使うことで味わいが出る。使いやすさや座り心地といった『用の美』もありますね。そういうものって、飽きないのです。時とともに空間に馴染み、じわじわと『好き』が持続していきます」
「使うシーンを想定した客観的なアドバイス」で新たな発見
ソファの次に小山さんが選んだのは「縄を張り、結ぶ」ことで生まれる形からインスピレーションを得た「Nawabari(ナワバリ)」というシリーズのプーフ(クッションスツール)。気に入った理由を尋ねると「これはとても企みに満ちたデザインだと思うんです」と、感心した様子で表情を緩めました。中身の詰まった大きな包みを、縄でギュッと縛ったようにも見えます。
「米俵みたいな形ですが、一見すごく普通。存在感を主張しすぎず、椅子にも、オットマン(足置き)にも、オブジェのようにもなって面白いなと思います」
デザインの核心を内に秘めつつ、空間に溶け込み、暮らしに馴染む。使う人のさまざまな動作、生活のシーンに寄り添う。そんなふうにインテリア全体がバランス良く調和するように、BoConceptは家具選びの際に3Dシミュレーター「ルームプランナー」のサービスを提供します。
「by nendo」のソファや「Nawabari」のプーフといった軸となる家具を選んだ小山さんには、実際の部屋の写真を用いて、家具の配置やサイズ感をシミュレート。さらに、インテリアスタイリストが好みやライフスタイルに合わせ、ソファの下に敷くラグマット(Furrow)、サイドテーブル(Expose)、ソファ横の収納棚(Santiago)、棚の上の絵画(Eternity)、柔らかい光を放つ間接照明のテーブルランプ(Stockholm)などをアドバイスしました。小山さんの好みであるモスグリーンの家具を基調に、ダークトーンの木目の表情やシルバーカラーをアクセントにトータルコーディネートしたのです。
「(ソファの横に置いた)サイドテーブルは僕の選択肢にはなかったのですが、『ここにあると便利ですし、アクセントにもなりますよ』と勧められました。色も、自分で選んだら黒にしたと思うのですが、『シルバーの方が馴染みそうです』とアドバイスをいただきました。実際に置いてみると、確かにシルバーがいい。黒だときっと重い印象になったと思います」
自分だけで家具を選ぶと、家具単体での好みの色や形に偏りがち。使うシーンを想定したアイテム選びや、空間全体のバランスを考慮した客観的なアドバイスは、小山さんにとっても新たな発見だったと言います。
「心地よい空間はいい仕事をするための原料」 デスクの新調が与えた変化
日々会議や打ち合わせをこなす一方で、集中して執筆する時間も小山さんには不可欠です。小山さんが書斎用のデスクに選んだのは、ダークブラウンのオークの木目に、作業スペースを広々と確保した「CUPERTINO(クパチーノ)」。大きな引き出しやデバイス類の配線ホールなど、機能面にも優れたデスクです。シンプルな革張りのオフィスチェア「ADELAIDE(アデレイド)」と組み合わせて、落ち着いた書斎空間が完成しました。
「お話ししたように、最近はリビングで仕事することも多かったのですが、このデスクとチェアを入れてから、圧倒的に書斎で書くことが増えました。これまで小さめのデスクを使っていたのですが、どこか窮屈だったのですよね。でも、広々としたデスクにパソコンだけを置いて、あるいは原稿用紙に向かって集中して仕事できるのが本当に心地いい。木の表情と天板中央のマットブラックの質感の組み合わせも気に入っています。心地よい空間は、いい仕事をするための原料みたいなものだと改めて感じました」
「長く大切にできるものを少しだけ持つ」 坐辺師友の精神
小山さんは、長く暮らしを共にする家具を「所有しているというより、預かっているような感覚」と語ります。良い家具は、時に自分自身よりも長く受け継がれる。だから、自分が使っている間は大切に時間を重ねていく――。
「僕の好きな言葉に、北大路魯山人が言った『 坐辺師友(ざへんしゆう)』という言葉があります。自分の座っているその周辺が、師であり友であるという意味です。師であり友であると思えるものに囲まれて暮らすと、おのずと生活は豊かになっていく。年齢を重ねるにつれて、長く大切にできるものを少しだけ持つことが豊かさであると感じています」
上質で心地よく空間と調和した家具が、自宅で過ごす小山さんに贅沢な時間を与えているようです。
こやま・くんどう/1964年熊本県生まれ。大学在学中から放送作家として活動を始め「カノッサの屈辱」「料理の鉄人」など数多くの番組を企画。初の映画脚本『おくりびと』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、 米アカデミー賞外国語映画賞を受賞。執筆活動の他、地域・企業のプロジェクトアドバイザー、2025年大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーなどを務める。くまモンの生みの親としても知られる。
ボーコンセプト。1952 年にデンマークで生まれたインテリア・ブランド。ブランド名の「Bo」はデンマーク語で「生活」を意味します。高品質でありながらデザイン性と機能性を備えた、モダンな北欧スタイルの家具を提供しています。豊富な商品ラインアップ、サイズや素材・色等を選べるカスタマイズ、そして経験豊富なインテリアスタイリストによるコーディネートで、理想のお部屋作りをサポートいたします。