元気だけは誰にも負けない中学生の娘 父から花束のサプライズ
フラワーアーティストの東信さんが、読者のみなさまと大切な誰かの「物語」を花束で表現する連載です。あなたの「物語」も、世界でひとつだけの花束にしませんか? エピソードのご応募はこちら。
〈依頼人プロフィール〉
秋田義一さん(仮名) 53歳
公務員
神奈川県在住
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父が突然、中学生の娘に花を贈る……。「えっ、やばっ!」「マジ、何?」。娘がそう叫ぶことは想像できます。
娘の頭のなかは、ほとんどが部活のバレーボールと、昭和の雰囲気が漂う歌。いつの間にか身長も伸びて、元気だけは誰にも負けません。小学校に上がる前はドレスを着て家族写真を撮ったこともあるけれど、小学生になってからはパンツスタイル以外は見たことがありません。
寝坊して寝癖がついたヘアのまま、学校に飛び出して行ったこともあります。私は毎朝、会社に行く前に、娘を車で駅まで送ることを日課にしています。車中、娘の寝癖を指摘したところ、「大丈夫大丈夫」とまるで気にせず、行ってしまいました。
父娘の関係も良好なほうだと思います。例えば、独立している大学生の長男以外の家族3人で関西に旅行したときのことです。妻1人が別行動で、私と娘は2人でUSJに出かけ、楽しい時間を過ごしました。妻に言わせると、「父親の近くに寄るのも嫌がる女の子が多いなか、2人で出かけられるなんて他のご家庭ではありえないわよね」なのだとか。
娘が大人になってしまうことをさみしいと思う世のお父さんも多いようですが、私の場合は、どちらかというと年の離れた友だち感覚でしょうか。できる限り毎晩、一緒にご飯を食べるもっとも身近な存在で、今のところいつか娘が独立していく日を思って目頭を熱くするという父親あるあるも、まだ感じたことがありません。
今までも不十分ながら、オムツを変えたり、おもちゃを買ってあげたりしてきました。USJの旅行も、当然ながら私のおごりです。中学生になってからは、娘の大好きなケーキやドーナツを買って帰ることが、私の重要なミッションになっています。
とはいえ、花を贈ったことだけはありません。娘も個人的に花をもらうのは、たぶん初めての経験ではないでしょうか。そんなときにネットで見かけたのが、東さんの手による「花のない花屋」のお花でした。
こんな美しいお花を贈られたら、娘はどんな顔をするんだろう。そんな答えが知りたくて、今回応募を決めました。「ヤバっ!」という言葉が出るのは間違いないとしても、もしかしたら娘の別の横顔を見ることができるかもしれません。楽しみです。
こうして投稿を書くうち、娘に対する安堵感と幸福感、そしてほんのわずかなさみしさを感じている自分がいることがわかりました。将来、娘にお花を贈ってくれる相手が現れたら……同じような気持ちになることを想像しています。
花束をつくった東さんのコメント
お父さんにとってのお子さんは、元気のよさと行動力が自慢。最初はカラフルな花束を考えていたのですが、ホワイトとグリーンのクールな感じでまとめました。
キングプロテア、パフィオペディラムなど、お子さんが初めてもらう記念すべきお花として、今まであまり見たことがなさそうなお花を集めて、インパクトを狙ってみました。また包みを開けたとたん、清涼感あふれるブルーアイスの香りも楽しめるはず。「ヤバっ!」を超えるひと言が出るように、本気出してお作りしたアレンジをお楽しみください。
文:福光恵
写真:椎木俊介
こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。選んだ物語を元に東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
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