時をかけるアイドル 水野あおいが20年ぶり「降臨」
「アイドル冬の時代」と呼ばれた1990年代、ライブステージを中心に活躍して熱烈なファンに支持された歌手・水野あおいさんが、20年ぶりに活動を再開した。ただしツイッター上のメッセージのやりとり限定。いまの顔は出さず、ステージ登場の予定もない。20年前の姿のまま、つつましい「復活」だ。それでも彼女の思い出を語り継いでいた筋金入りのファンらは、望外の再会に静かな喜びをかみ締める。水野さんにオンライン取材で思いを聞いた。
「冬の時代」 アイドルの王道貫いた
「こんばんは。お元気にしてますか??? ちょうど20年の記念の年なので少しだけお邪魔してみようかと思ってます。……」
水野さんが最初にメッセージをツイッターに書き込んだのは5月4日。続いて投稿されたのは、イメージキャラクター「くますけ」のイラストが添えられた肉筆メッセージや、小2で始めて4段の腕前だったというお習字で書いた「品川車庫」の4文字だった。熱心なファンには、どれも見覚えや心当たりのある内容という。
水野さんは埼玉県の出身。アイドルグループ活動を経て1994年に18歳でソロデビューを果たした。小さい頃テレビで見た、可愛らしいドレスで歌う松田聖子さんに憧れたのが歌手を目指したきっかけだった。
彼女が芸能界入りしたのは、松田さんらを人気者にしたテレビの歌番組が次々終わり、アイドル歌手の露出が激減していた時期だった。ヒットチャートはデジタルビートで激しいダンスをみせるガールズグループらが上位を占め、「ドレスを着飾ったアイドル」は深夜番組の道化役に起用されることも。それでも水野さんは自分がやりたかったアイドル像を貫いた。
長い髪を頭の両側でまとめた「ツインテール」というヘアスタイル。自分でデザインした、たくさんのフリルやぬいぐるみをあしらったお嬢様ドレス。時代遅れと見られるのをいとわず、スカートを揺らして恋を夢見る少女の姿を歌った。インストアイベントなど小規模なコンサートを各地で繰り返してCDを手売りし、ファンと積極的に交流。その活動スタイルは現在の「ライブアイドル」のさきがけと見られ、水野さんに影響を受けて芸能界を目指した後輩も現れた。
アイドル事情に詳しいライターの斉藤貴志さんは「歴史にたとえれば新選組のような存在。女性歌手が『カワイイ』から『カッコイイ』に走った時代の中で、消えゆく王道アイドル文化を守ろうとした希少な存在だった」と振り返る。
だが、冗談交じりで掲げた目標「武道館3日連続公演で大入り」はかなわぬまま、水野さんは4枚のアルバム、14枚のシングルを残して2000年3月に24歳で引退した。
往年のアイドルと思い出の物語。記者がこの話を伝えたかった理由を、末尾に余話として付しています。
「2000年という年には区切り感がありました。このまま続けて人気がなくなってコンサートができなくなるよりも、最高の状態で引退したかった」と水野さんは振り返る。「同級生たちも大学を卒業した頃。ふつうの生活にあこがれ、社会人として経験を積まねばならないと思いました」とも。渋谷のライブハウスを満席にした引退コンサートの盛り上がりはファンの語り草になっている。
顔出しなし SNS限定の活動再開
芸能界を離れてからの20年…
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