いつも電話でネクタイを注文する男性 理由を知った日、社長は泣いた
2021年3月ごろ、笏本縫製(岡山県津山市)に電話がかかってきた。
「葬式につけていけるネクタイがほしいんですけど」
かけてきたのは関西弁の男性で、黒いネクタイの注文だった。
自社ブランドのネクタイ「SHAKUNONE(笏の音)」に興味を持ってくれたらしい。
送り先や料金を確認して商品を発送すると、しばらくして電話がかかってきた。
「今度は結婚式につけていける白いネクタイを」
ネット注文も受け付けているが、年配の男性は電話で注文する人も少なくない。
社長の笏本達宏さん(35)は「商品を気に入っていただけたんだな」ぐらいにしか考えていなかった。
男性からは、その後も電話がかかってきた。
「黄緑のワイシャツに合う色は?」
「細いのと太いの、どっちがいい?」
「結び方は?」
そんなやりとりの中で、「次にイベントの予定はありますか?」と尋ねられた。
大阪・梅田の百貨店に期間限定で出店する予定があったので、日程を案内した。
◇
2021年4月、阪急メンズ大阪でネクタイを売っていた笏本さんは、まっすぐこちらに向かってくる男性に気づいた。
「こんにちは、板谷です。電話ではお話ししましたが、初対面ですよね」
そうあいさつされ、電話注文の男性だと気づいた。
そしてこの時、なぜ電話だったのかの理由がわかり、体が一気に熱くなった。
「今はもう、デザインも色も…