谷川俊太郎さん、「死」って怖くないですか 女子中学生の投稿に反響
死を思うことは、底なし沼に沈んでいくような恐怖――。13歳の女子中学生・吉川結芽さんがつづった、朝日新聞朝刊「声」欄の投稿(2月7日付)に、反響が広がっています。死は、わたしたちの心を揺さぶり続ける、答えのない、永遠のテーマなのかもしれません。〈生きているということ/いま生きているということ〉。長く読み継がれる詩「生きる」の作者、谷川俊太郎さんは90歳を迎えた今、どのように死をとらえているのでしょうか。オンラインで話を伺いました。(聞き手 高松浩志)
――吉川さんの投稿が掲載されると、その後の2カ月で百数十通もの反響投稿が届きました。谷川さんは吉川さんと同じ13歳の頃、死を強く意識しておられましたか。
「子どもの頃から僕は、自分の死よりも母親が死ぬのが怖かったですね。寝る時に時々『このまま死んじゃうんじゃないか』と、ごくごく平凡な悩みはありましたけれど、それはあまり自分に影響していない気がします。自分より自分の愛する存在の死が怖いという感覚は、ほんとに長い間続きました。今思うと、若い頃の死の感覚はとても抽象的だったと思います」
――当時を、太平洋戦争末期の東京で過ごされました。
「戦争で死ぬという実感は、薄かったです。空襲の後に友人と自転車で焼け跡に行って焼死体を見たことが戦争の一番リアルな体験ですが、戦争自体が自分の身に切実に迫っていなかったのです。身内に戦争で死んだ人がいなかったからでしょうか」
――声欄の反響投稿には、「命を使い切りたい」という吉川さんに「生きてそこにいるだけで、だれかの希望になるのかも」と書いた方もおられました。
「そこにいる、そばにいるということが大事だと思います。ボディーランゲージというか、身体同士のぬくもりですね。そばにどれだけ長くいるか。時間ってものは大きいんだよね、人間にとって。家族ってものが大事なのは基本的にそういうことがあるからで、友情もそうですよね」
――吉川さんにかけるとすれば、どんな言葉を?
「言葉ってどうしても抽象的…