老老介護の果て、夫は妻を手にかけた いつもリンゴをむいた包丁で
「老老介護」の状態に追い込まれ、妻を殺害したとして殺人罪に問われた夫の裁判員裁判が5日、水戸地裁であり、執行猶予付きの判決が言い渡された。「妻の面倒はみんな俺が見る」と話していた被告は、介護に疲れたうえ、自らが末期がんになったと思い込み、殺害に至った。
判決によると、87歳の被告は3月8日午前8時ごろ、茨城県日立市の自宅で、介護していた妻(85)の胸を包丁で刺し、殺害した。被告は、自分の腹部も包丁で刺していた。中島経太裁判長は、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役5年)の判決を言い渡した。
被告は中学校を卒業後、日立製作所で働き、妻との間に2人の娘をもうけた。次女が結婚した1995年からは、妻と2人で暮らしていた。
妻は5年ほど前に白内障が進行し、視力が低下した。体をぶつけて自宅の玄関のガラス戸を割ってしまうなど、1人では歩けない状況になった。
証人尋問で、次女は「眼鏡屋の店員に、診察と手術を受けた方がいいと言われると、母は大泣きした」と証言した。それ以来、白内障の治療は受けていなかったという。
妻は3年ほど前に脱腸で入院した。だが食事を拒絶するなどして、退院することになった。
次女は「母は排泄(はいせつ)などの世話を他人にされることを嫌がっていた。父の介護を受けることがギリギリの許容範囲だった」と述べた。
被告は妻が退院する際、病院の職員から「市に相談してもいいのでは」と提案された。だが「妻は、自宅が一番いいと言っていた。施設に行ったらよその人に迷惑をかけてしまう。妻の面倒はみんな俺が見るから」と話した。「長女と次女は、義父母の介護や仕事で忙しく、なかなか介護を頼めなかった」とも振り返った。
そうして被告は妻の介護を続けていた。よくリンゴをむいた。食べづらそうな時はすりおろして、口に運んであげた。
しかし、今年2月中旬に被告…