第9回「秘密警察創設者」像に怒りの鉄タマ ロシア側が明かした撤去の内情
1991年8月にソ連で共産党保守派によるクーデターが失敗に終わった後、国家保安委員会(KGB)の前身の秘密警察の創設者、ジェルジンスキーの銅像が引き倒された。日本大使館員の現地報告やロシア外務次官が語った内情が、日本外務省が2022年末に公開した外交文書に記されていた。
クーデター失敗翌日の8月22日、モスクワ市街での勝利集会で民衆は歓喜に沸いていた。一部が「ソ連共産党打倒」「ロシア万歳」とデモ行進し、夕方にKGB本部前の「ジェルジンスキー広場」に集結。その様子を日本大使館員たちが記録していた。
「夜に入り、広場中央のジェルジンスキー像の引き落としにかかっている。民衆の規模は1万5千人以上、建設用クレーン車を導入し、鉄タマをぶつけている」「午後11時半、大型クレーン2台につり上げられた像は市民の大歓声の中で引き落とされた。KGBは何の反応もせずに静まりかえったまま」
58年にできたジェルジンスキー像はソ連共産党政権下の粛清や弾圧の歴史を体現しており、クーデターを乗り越えた改革派市民の怒りの矛先が向けられた。改革派のポポフ・モスクワ市長が撤去を決めたという当時の報道もある。
撤去の2日後、茂田宏ソ連公…
- 【視点】
リアルタイム世代としては、ジェルジンスキー銅像が引き倒される光景は、ソ連体制の崩壊を象徴するものとして、記憶に刻まれている。 もしも、あの動きが、記事にあるように民衆のエネルギーを「ガス抜き」するといったニュアンスだったとしたら、今さらな
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