第6回NPT調印めぐり、密使と外務省がつばぜり合い 69年日米会談前
沖縄の1972年返還に合意する69年の佐藤栄作首相とニクソン大統領の日米首脳会談に向け、日本の核保有を防ぎたい米国が望むNPT(核不拡散条約)調印について、佐藤首相に明言を求める首相密使の若泉敬・京都産業大教授と、拒む外務省のつばぜり合いがあったことが、新たに見つかった文書からわかった。
文書は、69年11月19~21日にホワイトハウスであった首脳会談の数日前に佐藤首相向けに書かれた会談シナリオで、若泉氏の直筆とみられる。96年に亡くなる若泉氏が晩年、佐藤首相の次男で元自民党衆院議員の信二氏に送った文書のコピーを、信二氏の娘の夫で、自民党参院議員の阿達雅志氏が保管していた。
会談でNPT早期調印の考えを示す案を佐藤首相に若泉氏が示す場面は、94年に若泉氏が首相密使としての過去を明かした著書にもある。ただ、この文書にはニクソン氏の反応まで記され、若泉氏が極秘交渉相手のキッシンジャー大統領補佐官とやり取りして盛り込んだ可能性がある。
文書では会談初日で核問題を扱うことを前提に両首脳の想定やり取りを記載。沖縄返還に伴う米国の核撤去を共同声明でどう表現するかの合意、返還後の緊急時の核再持ち込みに関する密約への署名などに続き、NPTの話が出てくる。
文書によると、佐藤首相から「与野党に反対論や慎重論がまだかなり強いけれども、なるべく早い時期に調印する」と言い、ニクソン氏が歓迎。佐藤首相が「沖縄の『核抜き』返還と取引された印象を与えることは絶対に避けなければならないので、外部には一切発表しないよう」求め、ニクソン氏が同意する運びになっている。
一方、米国は正規の外交ルートでも、会談で佐藤首相がNPT調印に前向きな姿勢を示すよう国務省が求めていた。焦点を沖縄返還に絞りたい外務省は抵抗。ぎりぎりの交渉がわかる極秘文書が、外務省による2019年の外交文書公開の対象に含まれていた。
会談4日前の共同声明案では…
- 【解説】
書きました。沖縄返還に合意した1969年の日米首脳会談時に交わされた核密約について、佐藤栄作首相向けの手書きシナリオが見つかったという年明けの「若泉文書」記事の続報です。よくある「~がわかった」という形では書きにくいのですが、これも筆者とし
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