【そもそも解説】円安・円高の仕組み 高金利を求めて駆け巡るお金

編集委員・中川透
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 2022年に大きく進んだ円安。日本ではこれまで歓迎されてきたはずなのに、なぜ昨年は大騒ぎになったのでしょうか。23年は円高と円安のどちらに向かうのでしょうか。為替レートのそもそもを解説します。

Q 円安は、私たちの暮らしにどう関係があるの?

A 2022年は年初の1ドル=115円から一時151円まで円安が進みました。115円だった1ドルの輸入品を買うのに151円必要となる計算です。円の価値が落ちるから、円安と呼びます。私たちの生活へのデメリットは、輸入品の価格上昇です。昨年はロシアのウクライナ侵攻で原油や小麦の国際相場が上がったうえ、円安が進んで、電気代や食品の物価高に拍車がかかりました。

Q 円安のメリットは何なの?

A 日本は、自動車メーカーなど商品を輸出して稼ぐ産業が強い。円安だと輸出は輸入と逆にメリットとなり、海外で売る時の値段を下げられ、売りやすくなる。輸出企業はもうけが増え、業績がよくなるから株価も上がりやすい。輸出企業が円高で苦しむ時期が長かっただけに、企業の業績アップと株高の面から、円安は歓迎されてきました。

Q では昨年はなぜ円安が大騒ぎになったの?

A あまりに急に進んだためです。企業は経営計画をたてにくくなり、消費者は物価高に直面しました。「悪い円安」との見方も出ました。影響を抑えるため、政府が市場で円を買ってドルを売る為替介入をしたほどです。また、円安で業績が好調な企業が増えても、従業員への還元はすぐに進みません。物価高の一方で賃金は上がらず、消費の冷え込みを心配する声が高まりました。

Q そもそも円安や円高はなぜ起きるの?

A 1ドル=130円といった為替レートは、国と国のお金の交換比率。だから、国同士のお金の動きに影響するできごとが変動の要因です。昨年の円安は日本と米国の金利の差が主な理由でした。コロナ禍で世界の経済が悪くなり、日米ともにいったん金利が低くなりましたが、米国はその後に景気が回復。物価が急上昇し、景気の過熱を抑えるため、金利を昨年から上げ始めました。日本も最近物価が上がっていますが、日本銀行は景気の回復がまだ不十分とみて、低金利政策を見直していません。日米の金利差が広がり、高い金利を求めて、円を売ってドルを買う動きが強まりました。

Q 為替レートはこの先どうなるの?

A 円安が進んだ22年に対し、23年は円高の流れとみる専門家が多い。22年は金利差が拡大した一方で、23年は縮小する可能性が高いためです。すでに金利が高くなった米国は、23年中に利上げをとめる可能性があります。一方で、日本はこのまま物価上昇が続くと、金利を上げるかもしれません。日銀の黒田東彦総裁が、4月に任期を迎えます。総裁交代のタイミングで、日銀が低金利政策を見直すとの見方が根強くあります。

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この記事を書いた人
中川透
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専門・関心分野
くらしとお金(資産運用、不動産、相続など)