経済成長と不況が流行歌を生む? 安部若菜・早川夢菜の昭和歌謡分析

有料記事

構成・阪本輝昭
[PR]

NMB48のレッツ・スタディー!経済編⑮ 流行歌と経済の関係って?

 人気投資漫画「インベスターZ」にNMB48メンバーが入り込み、経済知識や理解を深める「NMB48のレッツ・スタディー!」経済編。NMB48の安部若菜さん(21)と早川夢菜さん(20)が「インベスターZ」の登場人物たちと一緒に「お金と経済」について考えます。

記事後半で読者プレゼント企画を案内

今回のお題は「流行歌と景気に関係はあるか」。前回(第14回)の「昭和歌謡再ヒットの謎」の続きです。記事後半では、安部若菜さんと早川夢菜さんのサイン色紙が抽選で当たるプレゼント企画の案内もあります。

安部若菜さん・早川夢菜さん まさかの「スイートピー」かぶり!?

 安部若菜「さて私たち、『昭和歌謡再ヒットの謎』を考察してきたわけだけど」

 早川夢菜「私とわかぽんさん、意外に昭和歌謡好きだってことがわかりましたね。私、NMB48に入る時のオーディションで、松田聖子さんの『赤いスイートピー』(1982年)を歌ったんですよ~」

 安部「えっ、本当に? 私もだよ!」

 早川「ええっ! まさかの『赤いスイートピー』仲間ですか?」

 松井秀樹(道塾学園1年生)「わかぽんとゆななん。そんな共通点があったとはね」

 安部「わっ! 『会社四季報』オタクの松井さん。何でまたここに?」

 財前孝史(道塾学園投資部員)「ごめん。彼、昭和歌謡も大好きらしくて、ぜひ話に加えてほしいというもんだから……」

読者の皆さんから募集…「昭和歌謡の思い出」から見えたものとは

 早川「趣味の範囲が広いのね」

 神代圭介(投資部主将)「今回、読者のみなさんから『昭和歌謡の思い出』を募ったら、たくさんの投稿をいただいたよ」

 安部・早川「へ~。知りたい知りたい」

 財前「いただいた投稿を読んで思ったんだけど、楽曲の記憶って、その時代の印象と密接に結びついているんだよね」

 安部「ああ……。それはそうでしょうね」

 神代「流行曲って、どこか、世相や時代の空気を反映しているところがあるのかも知れない。特に、そのときの経済状況をね」

 早川「どんな曲がはやるかってことと、景気の動向に何か関係があるの?」

 神代「それを、いただいた投稿をヒントに考えてみよう。まず『キャノンブル』さん。西城秀樹さんの『YOUNG MAN(Y.M.C.A.)』(79年)など3曲が好きだって。『国民を巻き込んだ明るいテンポ、応援歌のような雰囲気』がいいって」

 安部「その頃は時代の変わり目ですよね。高度経済成長が終わって、バブル経済期に入る前ぐらい?」

 神代「この曲がはやった79年は……。経済的な時代区分でいえば、高度経済成長期のあとの『安定成長期』(73~91年)の前半にあたるね。安定成長期とはいえど、2度にわたるオイルショックの余波などもあり、経済や国民生活に混乱が生じた時代でもあった」

 早川「そんな時代だからこそ、元気の出る明るい曲がはやったんですか?」

 松井「敗戦後の日本ではやった『リンゴの唄』なんかも、そうかも知れないね」

 財前「『舞姫@まいか』さんがアルバイトをしている高齢者施設では、『リンゴの唄』が利用者さんたちに大人気なんだって。苦しい時代に元気をもらえた曲は、ずっと忘れないものなのかも知れないね」

経済の混乱期は…「元気になれる曲」がはやる?(安部さん)

 安部「元気を出したい時に音楽は効きますよね。私も仕事の前にはアップテンポな曲をよく聴くよ。昨年は『君は天然色』(81年、大滝詠一)を一番よく聴いたかなあ」

 早川「元気な曲、私も大好きです」

 神代「一方で、『もりちん@ソソウchuu』さんが好きな曲として挙げてくれた『22才の別れ』(75年、風)のように、切なく心にしみる楽曲も時代の変わり目には好まれる傾向があるみたいだ。これも、高度経済成長が終焉(しゅうえん)を迎えた頃の曲だけど……。自分自身を、あるいは自分の周りを見つめ直すような世界観の曲が多く生まれた時代でもあるよ」

 早川「明るく元気な曲ばかりがはやるわけじゃないんですね。そりゃ、そうか……。ふっと自分一人になったときに聴きたくなるのは、むしろ切ない系統の曲かもね。過ぎゆく時代を、静かに見送るような気分でね」

 安部「私の好きな音楽は、70年代~80年代前半の曲が多いんですけど。バブル経済期とも一部重なる80年代後半はどうですか?」

 松井「パーティーでかかるようなノリのいいダンスチューンなども流行したけれど、同時に、哀(かな)しみとか切なさ、孤独をうたったような名曲も多く歌われた時代なんだよね」

 早川「へえ~、意外。そういえば、私の好きな『恋におちて』(小林明子、85年)も、そんな切ない曲の一つですね」

 松井「景気が上向いていた時代には、好景気時代なりの心の空洞があったのかもね。好景気の波に取り残された人たちもいたし、『お金が人生の全てなのか?』と自分の内面を見つめ直した人もいただろうし」

 安部「そうか。だから時代状況によっては、メッセージ性やテイストが大きく異なる楽曲どうしが仲良くヒットチャートに並んでいても不思議はないわけね……」

 松井「そうだね」

 安部「昭和歌謡って、奥が深いですよね。明るい曲にも一抹の悲しみが同居しているように感じることがあるし、切ない曲にも少しの明るさが含まれていることがあるし……」

 松井「同感だよ。繊細な感情たちが小さく美しく、ぎゅっと一つの器の中に詰め込まれたお弁当箱。それが昭和歌謡だと僕は思ってる。さっき、わかぽんが好きな曲として挙げた『君は天然色』も、作詞家の松本隆さんが最愛の妹さんを亡くされた悲しみの中で書き上げた詞だといわれている」

 安部「そのお話、聞いたことがあります」

「木枯しに抱かれて」で告白された片思い 昭和の流儀?に早川さん驚く

 早川「昭和の楽曲って、物語性があるものもけっこう多いですよね。起承転結があって、季節の移ろいがあって、山もあれば谷もあって……。どこか、歌詞と自分の人生を重ね合わせながら聴ける部分があるからこそ、ずっと飽きられないんでしょうね」

 財前「ちなみに、『しろひげのしゅう』さんは『木枯(こがら)しに抱かれて』(小泉今日子、86年)の思い出を書き送ってくれています」

 早川「悲恋のラブソングで歌詞は切ないのに、聴いたあとはなぜかさわやかな気持ちになれる不思議な曲ですよね。意外とアップテンポだし、片思い中の人への応援ソングなのかなと感じます。歌詞は重たいのに、小泉さんの高くかわいい歌声と曲調が印象を明るくしている面もあるなと思いました。作曲者の高見沢俊彦さんは、私たちNMB48の曲『一週間、全部が月曜日ならいいのに…』の作曲も手がけてくださっているんですよ。こっちの曲は『恋に恋している』感じというのかな。ポジティブな歌詞と相まって、明るい青春ラブソングという感じです。でも、主人公の学生のピュアな恋が報われる未来は見えなくて、ちょっと切なくなる曲でもあります」

 財前「ゆななん、語るなあ……。『木枯し…』ですが、投稿者さんによると、大学時代、サークル仲間とカラオケに行った際、その中の一人がじーっと投稿者さんの目を見つめながら、この曲を歌ったんだそうで。愛の告白だと感じたそうです」

 早川「『せつない片想(おも)い あなたは気づかない』って、歌詞にありますもんね」

 財前「投稿者さんには、当時付き合っていた方がいたので、あとで直接会って『気持ちに応えられない』と伝えたそうです」

 安部・早川「切ないなあ……」

 松井「そういえば昭和時代は、自分の選んだ曲をカセットテープに入れて好きな人に贈り、自分の気持ちをさりげなく伝える……なんてこともはやっていたようだよ」

 早川「え~! そんなことが!」

「気持ちを察する」文化が育んだ昭和歌謡(安部さん)

ストレートに気持ちを伝えてくれた方が…(早川さん)

 安部「それは、日本の『気持ちを察する文化』『遠回しに伝える文化』の一つの表れかもね。奥ゆかしくて素敵ですね」

 早川「そうですかね。私はファンの人たちから、ストレートに『好き!』って言ってもらえるほうがうれしいですけど……」

 安部「それはそれでうれしいけどね」

 松井「おっと、授業の時間だ。『青春のラップタイム(2023)』(2023年、NMB48)を聴きながら、急いで戻るよ」

 安部・早川「松井さん、昭和時代の曲だけが好きなわけじゃないんだね」

経済を知りたければ…流行歌を聴け? 先行研究が示す意外な連関

宮宇地先生のかんたん!経済講座

 追手門学院大の宮宇地俊岳・准教授が各回のカギとなる経済用語を解説します。

     ◇

 音楽の流行には、日々生活をしている人々の心情が反映されることが予想されます。音楽の流行と経済動向には、どのような関係があるのでしょうか。このテーマの分析に取り組んでいる研究者の方々の知見を紹介したいと思います。

 まず、経済動向についてですが、1950年代から現在までの日本経済は、経済成長率の高低に着目して高度経済成長期(54~73年)、安定成長期(73~91年)、低成長期(91年~現在)の三つの時期に大きく区分されます。そうした時代区分の中で、経済的に大きな衝撃をもたらす出来事があった年があります。ニクソン・ショック、プラザ合意、バブル崩壊、アジア通貨危機リーマン・ショックなどです。

 音楽の「流行」をとらえるアプローチとしては、どのようなタイプの楽曲が何曲リリースされたのかという曲数や、レコード・カセットテープ・CDがどのぐらい売れたのかや、楽曲のダウンロード数(上位ヒット曲)、音楽動画の再生回数といった量的な指標が考えられます。また、日本レコード大賞・日本有線大賞・紅白歌合戦登場曲といった質的な視点からも捉えることができるでしょう。

 次に、流行した音楽の「特徴」を捉えるアプローチとしては、曲調が明るいか暗いかという意味では、サビが長調か短調かといった調性が考えられます。一般的に、長調は聴く人に明るい印象、短調はそれよりは暗い印象を与えるといわれています。

 また、歌詞の中に登場する単…

この記事は有料記事です。残り1548文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
阪本輝昭
コンテンツ編成本部統括マネジャー代理
専門・関心分野
労働、司法、芸能、歴史