第1回音楽を愛する人間になって良かった 加山雄三、スターを育んだ音と海
《昨秋の「ラストショー」で27曲を歌いきり、公演活動に終止符を打った。今は100歳まで生きることが目標だ》
こみ上げるものも、そりゃ内心はあるんだよ。でもそんなのを出したところでどうすんの。お涙ちょうだいなんてとんでもない。一生懸命、一つ一つが勝負だから。蹴っ飛ばすぐらいの気持ちで精いっぱいやったから、終わってどうだったとかも考えない。
ただスタッフとか、お客さんに感謝して、ありがとうって心から思うね。人前で歌えること自体、感謝の気持ちでいっぱいなんだ。それができるうちは花だよ。
歌手で俳優の加山雄三さんが半生を振り返る連載「波も嵐も越えられるさ 人生航海日誌」。全4回の初回です。
いま歌えって言われても、そのときと同じぐらいにできると思う。でもいいんだよ。やっぱり、どんどん歌えなくなってグズグズ続けるのは変だと思うよ。ありがとう、っていう思いが伝わったなら、もうそれでいいんだ。
迷惑かけずに生きていくにはどうしたらいいか。そればっかり考えてる。やっぱり幸せでなきゃいけないし、周りの人も幸せにしないと。加山雄三っていうのはおれ1人で頑張ったってこんな風になれなかった。人に支えられてここまできたっていう気持ちが、歳(とし)を重ねるにつれ、ものすごく増えてきた。歌は歌えなくても、船の上で話をしたり、絵を描いたりとか、何か人のためにできないかって考えているんだ。
《コンサート活動を引退した今、改めて思う》
言葉がなくてもね、音でもって言葉以上のものが伝わる。音楽は生涯の親友で、おれは音楽を愛する人間になって良かったなとつくづく思うんだよ。そうなったのはやっぱり、おやじの影響が大きかったな。
父、上原謙と茅ケ崎で見た戦争
《スター俳優だった父・上原謙さんは、加山さんが生まれた年、雑誌にこう語った。「音楽家にしようかとも思っています。こいつはレコードをかけてやると泣きやんでしまうんです」》
泣いていても、「セントルイ…