札幌市新年度予算案1兆2417億円 5類移行で微減、2番目の規模

古畑航希
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 札幌市は30日、一般会計の総額が1兆2417億円となる2024年度当初予算案を発表した。新型コロナの5類移行で自宅療養や検査などの業務が減った影響で、歳出は442億円減少。昨年度の当初予算から24億8500万円(0・2%)「微減」したものの過去2番目の予算規模となった。コロナ禍前の20年度当初予算比では2122億円増となった。

 会見で秋元克広市長は「3期目の本格的予算。『リスタート予算』と呼ぼうと思う。コロナ禍で経済にも大きな影響が出た。オリンピック・パラリンピック招致を停止しながら、GX(グリーン・トランスフォーメーション)という新たな方向性に向けていく」と評した。

 歳入の約3割を占める市税は、定額減税の影響により、36億円(1%)減の3465億円。ただ、減税分は全額、特例交付金で補塡(ほてん)される。地方交付税は167億円(13・2%)増の1431億円となり、市が自由に使える一般財源は5931億円となる。

 長期的な財政運営については、「今後も建設費含めた物価高騰の影響は数年続くだろう」と危機感を示す。人件費や資材など物価高によって建設費が増加するため、借金である市債は190億円(20・7%)増の1109億円を計上。24年度の市債残高は1兆1586億円で過去最高となる。

 貯金にあたる財政調整基金の取り崩し分も含む基金活用額は247億円で、基金残高(24年度末)は1187億円。27年度末の基金残高は想定よりも223億円少ない565億円で、悪化傾向にある。秋元市長は「より効率的な予算編成をしっかりやり、より将来負担が出ない形で進めていく必要がある」とした。

 歳出で約4割を占める保健福祉費は、新型コロナでの自宅療養や検査など、5類移行に伴う経費削減により344億円(6・8%)減とした。

 障害者の就労支援や共同生活の援助などを含む障害福祉費は1212億円(12・2%)増。利用者増加を背景に、働きながら高度なICTスキル習得を目指す講座開設や、重症心身障害児や医療的ケア児の短期入所体制の確保に向けた補助金などの新規事業に取り組む。児童手当などを含む児童福祉費も1071億円(6・2%)増とした。

 子育て支援では、中学生の通院費などを医療助成対象に追加し、111億9600万円を計上。いじめ対策として、スクールカウンセラーの配置拡充や1人1台持つ端末を活用して子どものSOSを把握する「心の健康観察」の導入など4億4100万円を見込む。

 脱炭素社会に向けたGX投資を呼び込むためのコンソーシアム「チーム札幌・北海道」の運営や、水素利活用の事業検討する「GX推進室」(定数26人)を設置し体制を強化する。新たにGX投資の推進費として1億8300万円を計上した。そのほか、水素を使った燃料電池で走るバスやトラックを導入する実証実験や水素ステーションの整備補助費などで2億2600万円を盛り込んだ。秋元市長は「GX分野は時間のかかる取り組みだが、将来の収支改善や新たな産業づくりにつながっていく」と期待を込める。

 一方で、札幌冬季五輪・パラリンピックの招致「停止」を発表したことを受け、招致関連の業務を担う招致推進部(定数35人)を廃止。大規模大会誘致などスポーツによるまちづくり推進のため「都市推進課」を新設するが、関連予算は計上しなかった。市は予算案を2月開会の定例議会に提出する。

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この記事を書いた人
古畑航希
北海道報道センター|教育、野生動物
専門・関心分野
自然環境、災害、平和