東京・羽田空港の滑走路で日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機同士が衝突、炎上し5人が死亡した事故で、誤進入を防止する目的で滑走路手前に設置されている「ストップバーライト(停止線灯)」が事故当時、メンテナンス中で運用を停止していたことが国土交通省への取材でわかった。ただ、国交省は運用していた場合でも、見通しの悪さや管制官の判断で使用するかどうかを決めているとし、「事故当時は使用する条件にあてはまらなかった」としている。

 停止線灯は、滑走路への誤進入を防ぐためのシステム。国際民間航空条約の付属書は「夜間などに活用することで誤進入予防策の一つとなり得る」としている。

 羽田空港にも1998年に導入され、事故が起きたC滑走路に設置されていた。

国交省「事故当時は運用条件に当てはまらず」

 管制官が離陸を許可するまでは誘導路の赤色の停止線灯が点灯し、管制官から滑走路への進入が許可されれば停止線灯が消え、誘導路の中心線が点灯する仕組みだ。羽田を含む全国14空港で導入されている。

 国交省によると、羽田空港の停止線灯は昨年4月から、メンテナンスのために運用を停止していたという。

 国交省によると、羽田空港では、視程が600メートル以下、または、管制官が必要と判断した場合に使われる。管制官が進入を許可した際、手動で停止線の点灯を消し、進路を点灯させるという。担当者は「仮に運用中だったとしても事故当時は、視程が5千メートル以上だったため条件に当てはまっていなかった」と話す。

 国際民間航空条約の付属書は、いかなる視程や気象状況でも誤進入が起こる可能性を指摘。「夜間及び550メートルを超える視程であっても、停止線灯を使用することが効果的な誤進入予防策の一つとなり得る」と記載している。

 停止線灯のほか、一時停止すべき位置を示すライトなどのシステムがある。

 元日本航空機長の八田洋一郎さん(75)によると、世界の一部の空港ではゲートから滑走路までの誘導路上にもライトが設置され、ライトに沿って行けば滑走路に到達。停止線灯が点灯し、進入できる状況になれば消灯するため、土地勘がなくても進行しやすかったという。八田さんは「誤進入の対策として、視界の良しあしにかかわらず、日常的に使われるようになることが有効だ。費用や管制官の負担は増えるが、二度と同じような事故を起こさないためにも必要だ」と話した。

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 事故原因を調べる国の運輸安全委員会は6日、JAL機のボイスレコーダーを回収。管制官からの聞き取りも始めたという。4、5日にはJAL機のパイロット3人と客室乗務員9人に聞き取りした。(角詠之、伊藤和行)