「1984」化する香港と自由への闘い 国家の「扇動」に抗するには

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聞き手・石川智也
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 理性を軽んじ大衆扇動に走る政治指導者が、再び米国のトップに立つ可能性がでてきた。日本でも、特定の集団や属性への反感をあおる政治家がなお立法府にいる。他方、ロシアや香港では、少数派や民主派の求めを国家が「扇動」と認定し抑圧している。

 扇動という行為の本質はどこにあるのだろう。香港を足がかりに現代中国の動向と自由を求める人々を見つめてきた阿古智子さんに、扇動と民主主義の関係について聞いた。

 香港では2019年、犯罪容疑者を中国本土に引き渡せる逃亡犯条例の改正をめぐり、大規模な抗議運動が起こりました。

 危機感を覚えた当局は国家安全維持法を制定し、以来、民主派を抑圧するために「扇動」という言葉をしきりに使っています。民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんは無許可集会を扇動した罪で半年以上収監され、昨年も、大学生が日本留学中にSNSで香港独立を主張する投稿をしたとして、国家分裂扇動罪の実刑判決を言い渡されました。

扇動のメカニズムと「洗脳」

 デモや社会運動は熱狂と不可…

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この記事を書いた人
石川智也
オピニオン編集部
専門・関心分野
リベラリズム、立憲主義、メディア学、ジャーナリズム論
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    倉田徹
    (立教大学法学部教授)
    2024年2月13日12時15分 投稿
    【解説】

    香港国家安全維持法が2020年に施行されて以来、香港では「扇動」を罪に問う動きが急増しています。「デモに行こう」と言えば「無許可集会扇動罪」、絵本で比喩を用いて政府を批判すれば「煽動性出版物散布罪」、ひいては選挙制度に対する不満を示すために

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    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2024年2月13日12時15分 投稿
    【視点】

    個人的には「主権者の知力と理性によって権力を理性化しなければ」的な「べきだ論」よりも、「主権者と権力が結託して非理性と暴力を指向するいまのトレンドを解毒するリアル解法はどこにあるのか」という点を深掘り思考してほしい、と感じる。 そうでないと

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