時速160キロ超は「過失」なのか 交通死亡事故 遺族の思い

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高橋淳
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 宇都宮市の国道バイパスで、バイクを運転していた会社員佐々木一匡さん(当時63)が、時速160キロ超の乗用車に追突され死亡した事故から14日で1年が経つ。自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の罪で起訴された被告の男(21)について、遺族は量刑の重い危険運転致死罪に訴因変更するよう宇都宮地検に求めているが、結論はでていない。

 一匡さんの一周忌を前にした12日、危険運転致死罪の創設に深く関わり、いまはベトナムで暮らす井上保孝さん、郁美さん夫妻が事故現場を訪れ、花束を手向けた。「危険運転致死罪ができたから良かったではなく、それが正しく運用されることが大切。でもいまだに理不尽な運用がある」

 1999年11月。家族旅行の帰りだった井上さんの車は、東名高速(東京)の料金所の手前で泥酔した男性が運転した大型トラックに追突され炎上。後部座席にいた3歳と1歳の2人の娘を亡くした。

 トラック運転手の一審判決は業務上過失致死傷罪などで懲役4年。控訴審で判決は確定した。夫妻にとっては「過失」の罪名が許せなかった。「飲酒運転は偶然の事故じゃない」

 涙ながらの訴えは国を動かした。死傷事故のうち、特に悪質な運転には不注意による「過失犯」ではなく、「故意犯」として罰を科す、危険運転致死傷罪を新設する改正刑法が2001年に成立。法定刑の上限は懲役20年で、過失運転致死傷罪の7年より重い。

 しかし、同罪は適用が限定的で「国民の常識と離れている」との指摘も出ている。特に運転操作が少ない直線道路の事故では、たとえ異常な高速度で運転していても、適用されないケースが相次ぐ。一匡さんの妻多恵子さんも事故後、担当検察官から「加害者は衝突するまで、まっすぐに走れている。制御不能な危険運転にはあたらない」と告げられたという。

 一匡さんのバイクに追突した男の車は仲間のバイクとカーチェイスをしながら走行し、追突時の速度は160キロを超えていたことが警察の捜査で判明している。バイクは車の下敷きになったまま引きずられ、原形をとどめなかった。

 「制限速度を100キロも超…

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