ALS、関連遺伝子を標的にした新薬も 毎年2300人が新たに発症
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は筋肉の病気ではなく、体を動かす運動神経が変性する病気だ。日本ALS協会によると、日本には約1万人の患者がいて、毎年2300人が新たに発症する。20代、30代で発症することもあるが、多くは50代以上。祖父母や両親など家族に患者のいるケース(家族性)が5~10%を占めるが、それ以外の「孤発性」の場合、原因や発症リスクはほとんどわかっていない。
発症から人工呼吸器を必要とするまでの期間は、中央値で3~4年とされる。手足の症状で始まるタイプに比べ、しゃべりや飲み込む嚥下(えんげ)機能の低下で始まるタイプの方が症状の進行は早い傾向がある。ただ、個人差が大きく、発症後1年以内に呼吸不全になることもあれば、10年以上も気管切開を伴う人工呼吸器を必要としない患者も1割程度いる。
日本ではALS患者の症状や遺伝情報をもとに病態解明や治療法開発につなげる「Ja(ジャ)CALS(カルス)」(事務局・愛知医科大)という研究が進められている。23年末時点で2399人が登録している。
JaCALSの解析によると、人工呼吸器を導入した場合、生存期間が中央値で約7年間伸びるという結果が出ている。とくに50歳未満で導入した場合、10年以上生きられるケースが7割以上に上る。
治療では症状の進行を抑える「リルゾール」と「エダラボン」という2種類の薬を服用する。歩行機能や呼吸筋を維持するためのリハビリを行い、ロボットスーツ「HAL」を使った治療も保険適用されている。ただ、過剰な負荷は、逆に筋力低下を悪化させる恐れがある。
体重を維持することが重要で、必要なカロリー摂取のために栄養士が関わることも多い。飲み込みが難しくなってきた場合には早めに胃ろうをつくり、経管栄養を併用することも選択肢となる。
会話が困難になってきた場合には文字盤やタブレット、パソコンなどを使ってコミュニケーションをとる。体の動く部位で操作することになるが、視線入力できる意思伝達装置もある。東邦大学医学部の狩野修教授(神経内科)は「診断初期から、医師や看護師、作業療法士、栄養士、言語聴覚士らがチームとして関わり、一人ひとりに合わせた治療を実施していくことが大切だ」と話す。
家族性ALSでは関連する遺伝子変異が特定されつつある。その一つSOD1遺伝子を標的にした「核酸医薬」と呼ばれる新しいタイプの薬が米国で昨年承認され、日本でも早期承認を求める要望書が厚生労働省に出されている。
JaCALSの事務局を務め…