それぞれの最終楽章 もう一つの我が家で(5)

ホームホスピス「われもこう」代表 竹熊千晶さん

 N子さん(享年63)から電話があったのは、2013年5月のことでした。ちょうど熊本市の新大江という地区に「われもこう」の2カ所目ができたばかりのころでした。

 電話の声は切実でした。「動けない。助けてください」。話を聞くと、乳がんの診断を10年以上前に受けているが、病院で一切治療をしていないとのこと。

 あわててお宅に伺うと、1階のリビングに布団を敷いたままになっていました。外出はもちろん、トイレに行ったり、2階の寝室に行ったりすることもできなくなっていたのです。乳房から浸出液が漏れ、下着が汚れています。すぐに、われもこうに入ってもらいました。

 N子さんのそばには、愛犬リラ…

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