「おい金子。金、出せよ」角川春樹さんとの縁が生んだコレクション
井石栄司
横浜はかつて漆器の産地だった――。そんな知られざる側面にスポットをあてた「近代輸出漆器のダイナミズム」が、神奈川県立歴史博物館(横浜市中区)で開かれている。展示品のほとんどは、輸出工芸などのコレクターとして知られる金子皓彦(てるひこ)さん(82)=大和市=の10万点にも及ぶコレクションの一部だ。
金子さんの収集活動を大きく後押ししたのは、大学の同級生だった映画プロデューサー、角川春樹さんのひと言だった。「おい金子。お前も金、出せよ」。大学卒業後、会社をつくるという角川さんから声をかけられた。親友の頼みに、いくばくかの金を出資した。角川さんからは「お前も取締役だからな」と言われたという。そうして手にした「役員報酬」などを元手に、金子さんは骨董(こっとう)を買い集めてきた。
最初は寄せ木細工の幾何学模…