最大勢力躍進のフランス左派とは 「長持ちしない」と識者がみる背景
フランス国民議会(下院、定数577)総選挙は、右派が過半数に迫るのでは、という事前の予想を覆して左派の政党連合「新人民戦線(NFP)」が最大勢力に躍進しました。フランスにおける左派とは、マクロン大統領の今後の政権運営への影響は。東京大学の中山洋平教授(ヨーロッパ政治史・フランス政治)に聞きました。
――フランスの政治勢力とはどのようなものでしょうか。
1980年代以前の伝統的なフランス政治社会では、右派、左派に明確なスタンスの違いがありました。主な対立軸の一つが社会経済政策です。大まかに言って、再分配を重視するのが左派、市場を重視するのが右派でした。ところが90年代ごろから、グローバル化の競争に勝つため左派政党も再分配を犠牲にして、資本家や大企業に優しい政策を取らざるを得ない状況になっていきます。
そんな中で庶民の不満の受け皿になったのが、「極右」「極左」とも称される急進的なグループで、この10年ほどは、極左だけではなく極右も同じように庶民への手厚い分配を主張するようになりました。
伝統的な左右の区別があいまいになる中で、いま最も明確な対立軸になっているのは、移民への姿勢です。「フランス文化」を守るためにイスラム系移民を排除しようとするのが右派、多様性を重視してこれを受け入れようとするのが左派です。
――左派連合NFPとはどのような勢力でしょうか。
「不服従のフランス(LFI)」や社会党、共産党、環境政党で構成する、今回の選挙のための急ごしらえの連合です。厳しい移民法や年金受給年齢の引き上げといったマクロン大統領が進める改革を覆す公約を掲げました。ただ、マクロン氏の中道政党は社会党を割る形で結成された経緯があり、社会党などとは、支持基盤や政策姿勢には近い部分があります。
マクロン氏が「極左」と嫌悪する理由
その一方で、メランション氏率いるLFIをマクロン氏は「極左」と呼び、互いに憎悪に近い感情を抱いています。
マクロン氏は、市場化で競争…
- 【視点】
良いインタビュー記事ですね。全方位に目配りがされています。なかでも二点、マクロンの個人史に由来する特性、議会内連携形成への関与に不得手な様子と、左翼陣営内の歴史的・構造的亀裂、独裁左派と多元性左派の違いが勉強になります。 その先、二つの
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