若い世代に多い脳腫瘍「胚細胞腫瘍」 意識障害、視力低下も

患者を生きるがんとともに

土肥修一
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 胚(はい)細胞腫瘍(しゅよう)は、精子や卵子になる前の未成熟な細胞から発生する腫瘍で、20歳未満の若い世代に比較的多い。生殖器のほか、脳のほぼ真ん中にある松果体や神経下垂体といった部分などにできる。

 松果体に腫瘍ができると、脳脊髄液の通り道がふさがれてしまう。すると、脳内に脳脊髄液がたまって圧力が高まる「水頭症」になり、頭痛や吐き気、意識障害を起こすほか、物が二重に見えたり、視力が低下したりする。

 熊本大の篠島直樹(しのじまなおき)准教授(脳神経外科)は「放っておくと失明する恐れがあるうえ、命に関わる」と話す。

 また、様々なホルモンの分泌に関わる下垂体に腫瘍ができることで、ホルモン分泌にも異常をきたし、様々な症状が出る。

 代表的なものが抗利尿ホルモンの分泌が阻害されて起きる「尿崩症」。おしっこが大量に出て、のどが渇いてしまう。

 治療はまず、内視鏡で腫瘍の組織を採り、腫瘍のタイプを調べる。水頭症を起こしている場合は脳脊髄液が流れるように腫瘍を避ける通り道をつくる手術を同時に行う。

 複数のタイプがあり、「ジャーミノーマ」と呼ばれるものと、それ以外に大きく分けられ、ジャーミノーマが7割ほどを占める。

 ジャーミノーマの場合、主に2、3種類の抗がん剤と放射線を併用して治療を行う。症状によってはホルモンを補充する治療もする。

 3種類の抗がん剤を使う治療は「ICE療法」と呼ばれ、4週間ごとに抗がん剤を5日間連続で投与する治療を3回(3コース)行い、その間に放射線治療も実施する。

 「ジャーミノーマは、外科手術で治すことができない腫瘍のため、化学放射線治療が必要となるが、抗がん剤と放射線による治療の効果は高い」と篠島准教授。

 早めに治療ができれば、長期に高い生存率が期待できるとし、「尿崩症の症状のほか、それまで頭痛がなかったのに、頭痛や吐き気が続いたり、物がぼやけてみえたりしてきた場合は検査を受けてほしい」と話す。

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