福島市が太陽光発電施設の規制条例を制定へ 来春施行めざす

酒本友紀子 岡本進
[PR]

 「ノーモア・メガソーラー」を宣言した福島市が、今度は太陽光発電施設を規制する条例の策定に乗り出した。建設の禁止区域を設けることや、その他の区域で許可制を導入することを想定しており、来年4月の施行を目指す。

 木幡浩市長が22日、記者会見で明らかにした。規制する区域は、森林伐採により土砂災害を誘発したり、景観や自然環境を損なったりする恐れのある山地を想定。施設を建設できない禁止区域をあらかじめ設けるほか、抑制区域も設けて事業の許可を市が判断する考えだ。

 許可した施設についても、業者に定期的な報告や対外的な情報公開を求め、違反業者は許可を取り消すことも検討する。現時点で罰則は考えておらず、違反した業者名の公表で対応。風力発電の施設も対象とする方針。

 福島市では市街地を見下ろす先達山など郊外の山地を中心に大規模な太陽光発電施設の建設が相次ぎ、市によると現時点で1メガワット以上の施設は工事中も含めて26あり、総面積は約800ヘクタールにのぼる。

 市は昨年8月、災害発生や景観悪化の恐れがある山地への設置をこれ以上望まない「ノーモア・メガソーラー宣言」を出した。今年2月に事業者の順守事項を定めたガイドラインを改正。市が不適切な区域での計画と判断した場合は中止を指導できるようにしたが、その後もメガソーラー計画の相談が13件あり、うち6件は市が中止を指導したにもかかわらず従っていないという。

 6月には先達山で工事中の施設造成地から大量の泥水が県道や農業用水に流れ込んだ。山肌がむき出しになった景観の問題も含め市民から多数の苦情が寄せられ、市が急きょホームページで建設状況を説明する事態に。他に市が知らないうちに事業者が変更された事例もあった。

 市が他自治体の例を調べたところ、禁止区域を広範に設けるなど踏み込んだ条例が増えており、こうした自治体では施行後に条例に反した設置が確認されていないことが分かったという。市の担当者は「ガイドラインは『お願いベース』で抑制効果に限界があった。条例化で実効性を持たせたい」と話す。稼働済みや着工後の施設については条例の対象にならないが、「事業者へのプレッシャーになる」と期待する。

 ただ、どこまで実効性のある条例になるかは、具体的な内容次第のところもあり、今後の焦点となりそうだ。市は今月末の環境審議会に骨子案を示し、パブリックコメントを経て来年3月の市議会に条例案を提出する予定。

 地方自治研究機構の調べによると、太陽光発電設備に関する条例は全国281市町村にある。県内では2019年の大玉村以降、7市町村が制定している。南相馬市や伊達市、矢吹町では「抑制区域」を設け、その区域での事業に原則首長は同意しないとしている。長野県安曇野市のように、地域住民の同意も必要とするなどの要件を事業者に課す自治体もある。

太陽光発電に関する他自治体の条例の例

・長野県松本市(今年4月施行) 地上設置型太陽光発電が対象。設置できない「禁止区域」と、事業者に設置しないことを求める「抑制区域」を設定。発電出力10キロワット以上の施設は市長の許可が必要。

・同県安曇野市(2023年6月施行) 発電出力10キロワット以上か、事業面積1千平方メートル超か、区域の高低差13メートル超の地上設置型太陽光発電が対象。地域住民の同意と市長の許可が必要。

岡山県真庭市(2023年4月施行) 事業実施には市長の同意が必要。面積が500平方メートル未満かつ高さが13メートル以下の事業は適用外。「抑制区域」にかかるすべての事業には同意しない。抑制区域外の事業には、市が指導・助言する

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

この記事を書いた人
酒本友紀子
福島総局
専門・関心分野
共生社会、人権、司法、国策と地方