新渡戸稲造の夢 夜間中学で受け継ぐ人々を描く 大阪などで上映

永田豊隆
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 「武士道」で知られる思想家の新渡戸稲造(1862~1933)はかつて、貧しい人たちのために「遠友(えんゆう)夜学校」という無償の学校を札幌市に開いた。閉校して80年たった今もその精神を受け継ぐ人たちの姿を追ったドキュメンタリー映画が、31日から大阪市で上映される。

 遠友夜学校は1894(明治27)年、札幌農学校(現北海道大)教授だった新渡戸と妻メリーが設立。授業料無料・男女共学・年齢不問という方針を掲げ、1944(昭和19)年の閉校までに約千人の卒業生を送り出したという。

 映画のタイトルは「新渡戸の夢~学ぶことは生きる証~」。新渡戸の思いを今に生かそうとする人たちが登場する。中心は、90年に始まった札幌市の自主夜間中学「札幌遠友塾」。戦争や貧困によって学校に通えなかった高齢者らが、年齢も肩書も様々なボランティアから算数や国語を教わる。引き算で全問正解した女性が子どものように喜ぶ様子が生き生きと描かれる。

 新渡戸は富や名誉より、人格形成を重んじたとされる。遠友夜学校の校歌(有島武郎作詞)は、世の中の「楽しき極み」は経済力でも名声でもないとして、「正義と善とに身をささげ」ることなどをたたえる。

 野沢和之監督(70)は「遠友夜学校にかけた新渡戸の思いは、今の時代にこそ見直されてほしい」と話す。

 31日~9月13日、大阪市淀川区十三本町1丁目のシアターセブンで上映される。一般1900円など。その後、シネマアイリス(北海道函館市、9月20~26日)、前橋シネマハウス(前橋市、9月21日~10月11日)でも上映を予定している。

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この記事を書いた人
永田豊隆
ネットワーク報道本部|大阪駐在
専門・関心分野
貧困問題、社会保障、精神科医療、依存症