再審請求「手続きの不備で救済が困難に」 裁判官らが語る審理の内実
強盗殺人などの罪で死刑が確定した袴田巌さん(88)の裁判のやり直し(再審)で、静岡地裁が26日、判決を出す。朝日新聞社は8~9月、再審請求審に携わった経験がある元裁判官ら50人に制度の運用実態や課題を尋ねたところ、18人が回答し、15人は現行の法制度を「不十分」とした。
対象は、再審請求審を担当した裁判官のうち、連絡先が分かった50人。元裁判官15人と現役裁判官3人の計18人が回答し、原則非公開の再審請求審の経験を明かした。
再審請求は、有罪判決が確定後、無罪を示す証拠を新たに発見した場合などに行う。刑事訴訟法には500条超の定めがあるが、再審については、裁判所の裁量で「事実の取り調べができる」などの19カ条だけ。具体的な手続きの規定はない。検察側から新たに開示された証拠が再審開始の決め手となる例も多い。
最高裁の統計によると、2017~21年に再審請求をしたのは約1160人で、再審開始の決定が出たのは13人。単純計算で1%程度だ。再審開始が確定すれば、再審公判が開かれる。
北海道庁爆破事件の再審請求審を担当した半田靖史氏は「手続きの不備が、無辜(むこ)の救済を困難にしている。運用に任せず、明確な手続き規定を定めないと改善は期待できない」と指摘した。
元大阪高裁判事の福崎伸一郎氏は「今の規定でもやれないことはない。だが、詳細な手続き規定があれば、やりやすいのは間違いない」とした。
再審請求審「審理に深入りしない」
強盗殺人罪などで死刑が確定し、釈放された袴田巌さん(88)が、最初の再審請求をしてから43年。静岡地裁が26日、再審判決を出す。裁判をやり直す仕組みに問題はないのか。全国で再審請求審に携わった経験がある元裁判官ら18人から、改善への注文が寄せられた。
袴田さんの場合、2度目の再…

袴田巌さん 58年後の無罪 なぜ死刑囚にされたのか
袴田巌さんに「無罪」が言い渡された。「死」を強いたこの半世紀は何だったのか。前代未聞の事件を数字からたどる。[もっと見る]