台風19号災害から5年 阿武隈川遊水地計画、用地買収まだ3割
2019年の台風19号災害から12日で5年。国と福島県は、大きな被害を出した阿武隈川上流域で、水を一時的にためて下流の被害を抑えるための巨大な遊水地の造成を計画している。28年度中の完成をめざすが、地権者との売買契約がまとまったのは全体の3割にとどまっている。
県内では氾濫(はんらん)した川からの濁流にのまれるなどして32人が亡くなり、避難で体調を崩すなどした関連死は8人に上る。
阿武隈川上流の鏡石町、矢吹町、玉川村では、洪水時に最大2千万立方メートルの水をためることができる遊水地造成に向けた準備が進む。ただ、国土交通省福島河川国道事務所によると、約800人の地権者が所有する用地350ヘクタールのうち、売買契約が成立したのは、今年9月時点で27%という。
11日に鏡石町で会見した同事務所は「協議は順調に進んでいる」と説明。「今後も個別の事情に応じて丁寧に対応していきたい」とした。
遊水地造成に伴い、対象の約150戸が移転を余儀なくされるが、このうち集団移転を希望するのは4割の約60戸。鏡石町と玉川村では、それぞれ遊水地近くの2カ所が移転先に決まり、来年度着手の造成工事を経て、早ければ26年度から移転が始まる予定という。
一方、阿武隈川の洪水時の水位を下げるための河道掘削工事は、約220万立方メートルのうち、8割にあたる170万立方メートルの掘削が完了したという。
遊水地整備と河道掘削で、洪水時、須賀川市で2・4メートル、郡山市で1・0メートル、本宮市で0・5メートルの水位低下の効果があるという。
国と県は「阿武隈川流域全体で防災・減災対策に取り組み、被害の低減を図りたい」としている。