自殺にみえた線路立ち入り 水面下の捜査 スマホに残る「証拠」
東京都板橋区の東武東上線の踏切内に立ち入るように仕向けて男性を殺害したとして、警視庁は8日、男性の勤務先だった建設会社代表の佐々木学容疑者(39)ら男4人を殺人と監禁の疑いで逮捕した。
「踏切内に立ち入った男性が、立ったままの状態でいた」
高野修さん(当時56)が踏切内で電車にはねられて死亡したのは昨年12月3日未明。この電車の運転士は警視庁にこう説明したといい、発生直後は自殺とみられていた。
防犯カメラに映っていたのは・・・
ところが、警視庁が周辺の防犯カメラを確認すると、不審な点が浮かび上がった。
高野さんを踏切近くで降ろし、はねられた後に走り去る2台の車が映っていた。捜査関係者によると、2台はいずれも高野さんが勤めていた会社の従業員の車と判明。警視庁の任意聴取に、従業員らは「車から降りたいと言って、自ら降りました」と説明したという。
自ら線路に入ったのは間違いないが、経緯を明らかにする必要がある――。
水面下で事件としての捜査が始まった。
「守れなかったら死にます」スマホに残ったやりとり
発生から数カ月後、ある捜査幹部は取材に、高野さんについて「マインドコントロールされている状態だったかもしれない」と語った。
従業員のスマートフォンを任意で調べたところ、プロレスと称し過剰に技をかける様子や、やけどの痕など、日常的な暴行をうかがわせる映像が複数確認された。SNS上で高野さんに「守れなかったら死にます」と言わせたとみられるやり取りも見つかった。また、高野さんを住み込みで働かせ、給料を支払わずに食事だけ与えていたことも判明したという。
高野さんが住んでいたのは築約30年の木造アパートの6畳一間の部屋で、大家の男性(89)は「あいさつすれば返してくれたが、おとなしそうな印象だった」と語る。
高野さんは日常的な暴行の末、自殺せざるを得ない状況に追い込まれた可能性が高い。こう判断し、自殺をそそのかす自殺教唆や手助けする自殺幇助(ほうじょ)ではなく、殺人容疑で捜査する方針が固まった。
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