拡大するラッピング列車の前に立つ宍戸優介(右)と金子大希=2024年11月11日、熊本県高森町、東野真和撮影
行楽シーズンたけなわの11月半ば、阿蘇カルデラの中を走る南阿蘇鉄道(南鉄)の終着駅、高森駅(熊本県高森町)に観光客を乗せたトロッコ列車が着いた。
敬礼して迎える社員の宍戸優介(27)は昨年秋まで、金子大希(29)は今年春まで、それぞれ高森町の地域おこし協力隊員だった。
鹿児島市出身の宍戸は2016年4月の熊本地震前に、南鉄に採用が内定していた。しかし、南鉄は地震で鉄橋が落ちるなど被害は甚大で、内定は取り消された。7月末に一部開通したが、全面開通には国の支援を待つしかなかった。宍戸は別の鉄道会社に就職したが「再出発の力になりたい」とずっと願っていた。
一方、当時南鉄の社長だった高森町長の草村大成(57)も、復興やその後を担う人材を早く確保したかった。目をつけたのが、国費で費用を賄える地域おこし協力隊制度だった。「活用できないか」と総務省の担当者に直談判して認めてもらった。
拡大する地図(高森町)
宍戸ら通算11人が隊員として携わり、4人が任期後に社員に、1人がまだ隊員として働く。宍戸と金子は隊員のうちに運転免許を取り、23年7月の全線開通に間に合った。
今年3月の決算は開業以来2度…