高松市中心部の商店街から脇道へ数十メートル入った先に、赤さびが浮いたトタン張りの木造2階建てがある。
開けっ放しの玄関からミシッミシッときしむ階段を上がると、天井まで届きそうな本棚が並ぶ2階で、不思議な会話が交わされていた。
輪の中心は30代の女性。婚活パーティーで会った男性とデートの約束をしたが、会話が弾むか不安になり、「とりあえずここに来た」。
「おなか痛くなったと言ってバイバイすれば」
居合わせた初対面の男女数人が好き勝手に助言する。役立つ答えがあったとはとても思えないが、女性は来たときより明るい表情で帰っていった。
奥のレジでたばこをくゆらせて合いの手を入れていた店主の藤井佳之さん(48)がつぶやいた。
「この店は変なイメージを持たれているんですが、僕のせいじゃない。いちいちお客さんが濃いんですよ」
ここは古書店「なタ書」。なたしょ、と読む。
予約するとその時間だけ開い…
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