国語のチカラ~入試に出た本、紹介します~
「本当の『わたし』とは?」から学問の世界を知る 松村圭一郎著「はみだしの人類学 ともに生きる方法」
2024.08.21

今回は、松村圭一郎著「はみだしの人類学 ともに生きる方法」(NHK出版)をご紹介します。同じ著者による「うしろめたさの人類学」は2019年度の開成、海城、豊島岡女子学園など、数多くの学校で出題され注目されました。「はみだしの人類学」も、21年度以降、複数の学校で取り上げられています。
A5サイズ100ページほどの本で字も大きく、ほのぼのとしたイラストが描かれています。新書を敬遠しがちな子でも手に取りやすいと思います。
「個人主義」「近代化」「民族」「西洋中心主義」など、小学生の日常とは無縁の言葉もたくさん出てきますが、入試の素材文ではおなじみの概念です。読み通すのが難しければ、まずは入試に扱われたところなど読めそうなところからチャレンジしてみましょう。
本の内容
文化人類学の見地から人間という存在、生き方について論じた本です。「はみだし」の意味が気になるところですが、「つながり」の説明から始まります。「つながり」とは、「人と関係する」という意味。ただし、AとBという独立した存在が最初からあってその間に関係が結ばれるのではないといいます。「子ども」との関係があってはじめて「親」になれるように、誰かとの関係のなかで自分の輪郭が意識される、と説明します。
「激しく対立し、分断しているように見えるのは、むしろ両者がつながっているからかもしれない」(19ページ)という考え方にはなるほどと思わされます。確かに、誰かと対立するには相容れない相手の存在が必要となります。