マグロは外洋を泳ぎながらイワシを食べ、イカを食べ、食物連鎖の頂点にいる。そんな「王者」をどこまでも捕まえにいって食卓にのせたのは、日本人の生の魚を食べたいという欲求と、漁業や流通を進化させた産業の力だった。長い日本人とマグロの歴史の中でも、戦後の高度成長期からの話である。大きく広がったマグロの世界。食べている自分たちがどれだけ実感しているだろうか。「マグロ 世界のごちそうになった魚」の「その1」では、マグロの見取り図を用意した。マグロの種類から始まり、どれだけとって、どう食べているのかというデータで示す。「その2」は、マグロをごちそうに育てた築地市場から、目利きという仕事に迫る。「その3」は、食卓に革命を起こした-60度の冷凍技術とコールドチェーンを探る。
現在、日本の市場に出回る主なマグロは7種。言わずと知れた高級品のクロマグロ2種やミナミマグロだけでなく、庶民に身近なメバチも日本の東沖を北上する秋冬のものは脂がのって格別だ。回転ずしの普及により「生のおいしさ」にスポットライトが当たったのはビンナガ。キハダやコシナガのように地域で支持されるものもある。ひとくちに「マグロ」と言っても、見た目、産地、味わい、用途は様々だ。
マグロの漁法は主に5種類。青森・大間の一本釣りが有名だが、はえ縄漁法と巻き網漁法で大部分をとる。そのほかに定置網や曳(ひ)き網がある。どんなマグロをとるか、どの海でとるかで漁法は変わってくる。刺し身で食べるか、缶詰にするかでも変わる。代表的な3つの漁法をCGアニメーションで解説した。
出典:FAO FishStatJ
出典:水産庁・水産総合研究センタ-編『国際漁業資源の現況』
出典:FAO FishStatJ
世界のマグロ関連団体が加盟する社団法人「責任あるまぐろ漁業推進機構」の推計によると、日本を除く国・地域の2011年の刺し身マグロ消費量は約15万トン。07年の前回調査時の1.78倍に増えた。欧米での日本食ブームが一般にも定着したことが大きい。一方、様々な食文化が広まる中国では、冷凍マグロを流通させるためのコールドチェーンが十分に整備されていないため、大きな伸びが見られない。マグロの刺し身を食べられるのはまだ一部の富裕層にとどまっているという。
世界の刺し身マグロ消費量
出典:責任あるまぐろ漁業推進機構まとめ