■特集:文系、理系…どっち?「文理選択」を考える

高校での進路の選択で、文系か理系を選んだ後に途中で気持ちが変わったら、変更はできるものなのでしょうか。いわゆる「文転」「理転」について、詳しく考えてみます。(写真=Getty Images)

文理転向はハードルが高い

高校2年または3年で文系、理系のクラスやコースに分かれた後は、大学入試で必要な科目の勉強を進めていくのが一般的です。しかし、いったん文理を選択しても、途中で気持ちが変わることがあるかもしれません。「やっぱり文系に行きたい」「理系にすればよかった」と変えたくなる可能性はあります。

そうなったときに、理系から文系に移る「文転」、文系から理系に移る「理転」は、できるのでしょうか。

代々木ゼミナール教育事業管理本部の佐藤雄太郎本部長は、「簡単ではありません。特に文系から理系に転向するのは教科・科目選択など現実的に厳しいところです」と言います。

というのも、大学入学共通テスト一つをとっても、文系と理系では入試科目が異なります。文系から理系に変えるとなると、数学は「数学Ⅲ」「数学C」を、理科はさらに2科目を独学しなくてはならない可能性があります。

もちろん、理系から文系への変更も簡単ではありません。覚えることが多い地歴・公民からさらに1科目を学ぶ必要があり、入試まで限られた時間の中で、すでに文系科目の蓄積のある生徒に追いつくのは、容易ではないことが想像できます。

独学で遅れを取り戻せるかがカギ

昭和女子大学附属昭和高等学校の真下(ましも)峯子校長によると、同校でも文理を変更する生徒は一定数いると言います。

「毎年、数人ですが、文理を変える生徒がいます。ただし、年度の途中で選択科目を変えることはできないので、独学で頑張るしかありません。その場合、本校では、教員が個別にフォローしています」

入試までに間に合わなければ、浪人する選択肢もあるかもしれません。しかし、代ゼミの佐藤本部長は「親世代のときと違って、今は積極的に浪人を選ぶ高校生は少なくなってきました」と話します。高校の成績や3年間の活動、学ぶ意欲などを見てもらえる総合型選抜や学校推薦型選抜といった一般選抜以外の入試方法が広がっていることや、経済的負担が増えることを考えて浪人しない傾向があるようです。

同志社大では文系型と理系型の試験を選択

「文系を選んだけれど、大学では幅広く学びたい」という場合は、文理融合の学部を選ぶのも一つの手です。2023年4月には、一橋大学ソーシャル・データサイエンス学部、金沢大学融合学域スマート創成科学類、静岡大学グローバル共創科学部、名古屋市立大学データサイエンス学部が設立されるなど、文系、理系分野を横断的に学べる学部が増えています。

これらの学部では入試の門戸を広げる傾向があり、文系でも理系でも受験できる場合があります。例えば同志社大学文化情報学部では、文系型、理系型の2タイプの入試方法を設けています。文系型は英語、国語、地歴・公民または数学の3科目、理系型は英語、数学、理科の3科目を課し、どちらかを選んで受験できます。

入学後に数学・物理の補習も

しかし、高校時代に理系科目を十分に学ばないまま文理融合系の学部に入ったら、困ることはないのでしょうか。特にデータサイエンス系の学部では、統計などの数学の知識が不可欠とされますが、授業についていけるのでしょうか。

そんな学生のために、入学後の学習支援体制を整える大学が増えつつあります

例えば、立正大学のデータサイエンス学部では、高校で理系科目を履修しなかった学生向けに、入学前教育や補習講座を用意しています。また文理融合系ではありませんが、近畿大学理工学部では、入学前に数学・物理の基礎学力をレベルアップできるインターネットを使った学習システムや、高校時代に未履修だった数学・物理の科目をマンツーマンで基礎から学び直せる体制を整えています。名城大学薬学部でも、物理の未履修者や苦手な単元がある学生に向けて、物理基礎を学べる講義を用意したり、学習サポートルームを用意したりしています。

習熟度別の補習講座の様子(写真提供=立正大学)

まずはしっかりと考えたうえで文系、理系を選択することが大事ですが、途中で変更したくなっても道はあります。「どうしても文転、理転したくなったとしたら、そう思うだけの『何か』が見つかったということです。そのエネルギーはきっと大きいし、進路を変更しても不可能なことはないと思います」(リクルートのキャリア教育専門誌『キャリアガイダンス』編集長の赤土豪一〔しゃくど・ごういち〕さん)。

安易な変更はお勧めできませんが、本気で文転、理転を考えるならば、道は開けそうです。

(文=竹倉玲子)

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