■理系女子の未来
大学入試に「女子枠」を設ける大学が相次ぐなど、女子の理系学部への道が広がりつつあります。東京電機大学理工学部を卒業した真下(ましも)祥子さん(28)は、ITコンサルタントとして世界を舞台に活躍しています。理系に進んだ女子には、どんな将来が待っているのでしょうか。(写真=本人提供)
ITコンサルタントとしてグローバルに活躍中
真下さんは、2018年3月に東京電機大学理工学部情報システムデザイン学系を卒業し、日本電気株式会社(NEC)に入社しました。
入社後、システムエンジニアとして交通系モバイルICカードの開発を担当し、ITコンサルタントとして台湾リテール顧客向けのプロジェクトにも参加しました。入社6年目の現在は、海外ベンダー向け言語支援や国内顧客向けのクラウドを用いた技術支援など職種にとらわれない社内支援を担当しています。
「主な仕事は、海外の現地法人が作成したマネジメントツールの検証や、PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)として海外現地法人が作成した製品を拡販することです。現地チームと協働して、顧客のシステム開発支援をすることもあります。私はクラウド技術を専門にしているので、部門内で勉強会などを開き、インフラ基盤のアーキテクチャー(構造)を解説したり、特定の技術の調査結果を共有したりしています」(真下さん)
大学で学んだことと現在の仕事との関わりについて、真下さんは次のように話します。
「大学で学んだネットリテラシーやプログラミングの知識、情報学の基礎などは、今の仕事に大いに生かされています。卒業論文では、匿名化をキーワードに、スマートシティーでデータ漏洩を防ぐにはどうすればいいかを研究しました。大学で学んだメディア技術者としての知識は、お客さまにより良い提案をする上で欠かせない視点です。クラウドを使用することで課題が解決し、業績が向上したと喜んでもらえた時に、仕事のやりがいを感じます」
大学ではセキュリティー分野の研究室に
大学3年次のゼミ選択では、最も興味のあったセキュリティー分野の研究室に入りました。
「ゼミでは、研究テーマであるIoTデータに関する基礎知識や、研究を進めるために必要な思考法、論文作成から発表まで一連のプロセスを学びました。さらに課外活動として、ハッカソン(ソフトウェア開発のイベント)や他大学とのワークセッションなどにも参加し、幅広い経験を積むことができました。満足できる研究ができたのは、理工学部情報システムデザイン学系の松井加奈絵助教(現在、同大システムデザイン工学部情報システム工学科准教授)が親身になってどんな相談にも乗ってくださったからで、今の私がいるのは松井先生のおかげです」
真下さんは、大学時代の研究を生かし、NECに就職しました。
「NECがセキュリティー事業に力を入れていたのと、OB講話に来てくださった大学の先輩から仕事の内容などをとても親切に教えていただき、NECで働きたいと思いました。その先輩とは現在、一緒に仕事をしていて、人柄やスキルの高さから多くのことを学んでいます」
電大の女子学生は増加傾向 「電大ガールズ」も話題に
東京電機大学の学部在籍者に占める⼥⼦の割合は、年々増加傾向にあります。特にシステムデザイン工学部デザイン工学科(女子28%)、未来科学部建築学科(同30%)、工学部応用化学科(同25%)、理工学部生命科学系(同32%)などで女子の人気が高まっています。
女子が増えている背景には、14年に発足した「電大ガールズ(D-girls)」も一役買っています。これは同大学の女子学生でつくる団体で、新入生のサポートのほか、大学と協働して女子高校生限定のイベントを実施するなど、理系進学を考えている女子高校生が安心して進学できるよう後押しをしています。
真下さんは、こう話します。
「私が電大に入学した時は、自分の所属していた学科では約200人のうち、女子は14人しかいませんでした。女子が少ないことはわかっていたものの、最初は友人ができるか心配でした。思い切って女子に話しかけてみると、好きなことが似ていたので、話が弾みました。大学時代の友人とは今も関係が続いています。男子も、同じ分野に興味を持っている者同士なので話しやすく、男女差はあまり感じませんでした。ただ、大学と駅の送迎バスは混雑時に知らない人と相席になりますが、ときどき私の隣に誰も座ってこないことがありました。その時は気づかなかったのですが、思い返すと私が女子だからという理由で、男子から気を使われていたのかもしれません」
気になることはそのぐらいでした。
真下さんは、現在の仕事場でも男女差はあまり感じないと言います。高い専門性が必要とされ、実力・成果主義であることから、男女関係なく活躍できる仕事だと言えるのかもしれません。
(文=黒澤真紀)
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